メキシコ政府が天然ガス開発を強化する方針を発表

(メキシコ)

調査部米州課

2026年04月10日

メキシコ政府は4月8日の早朝記者会見で、国内の天然ガス鉱床の開発を強化する方針を発表した。国営石油公社(PEMEX)のビクトル・ロドリゲス・パディージャ総裁は、これまで開発を行ってきた在来型鉱床に加え、非在来型鉱床の開発に取り組むとした。在来型鉱床は831億3,800万立方フィート(1立方フィート=約0.02832立方メートル)、非従来型では1,414億9,400万立方フィートの開発余地があると試算する。非在来型鉱床では、天然ガスが岩石の中に閉じ込められており、一般的に在来型鉱床よりも採取が困難とされている。

メキシコ政府は、水資源管理、持続可能な開発、地質学、環境分野の科学者および専門家から成る委員会を設置し、同委員会が2カ月後をめどに勧告を取りまとめる予定としている。非在来型鉱床の採掘には「フラッキング(水圧破砕)」と呼ばれる方法が取られることが多いが、メキシコ政府は環境に悪影響の懸念があるとしてフラッキングを避けてきた。クラウディア・シェインバウム大統領は「近年は環境への影響が低減された採掘方法も出てきている」と述べ、上記の専門家委員会で実現可能性や費用を精査しているところだとした。

こうした天然ガス開発を進める目的は、エネルギーの国外依存度の低下だ。ルス・エレナ・ゴンサレス・エネルギー相は同じ記者会見で、メキシコは天然ガス消費の約75%を米国からの輸入に依存していると述べた。加えて、「(メキシコは)国際価格の変動や供給停止のリスクに脆弱(ぜいじゃく)な状態だ。天然ガスの供給を他国に依存している限り、外国企業や他国の判断、あるいは国際情勢の変化に左右される状況にさらされている」として、自国での安定供給の必要性を強調した。現在、天然ガスコンバインドサイクルの発電所建設を進めていることにも理由の1つに挙げた。また、並行して高効率な設備の導入や、再生可能エネルギーによる発電所建設も進めていくとした。

専門家の間では、実現性に疑問の声も

メキシコ政府が非在来型鉱床の開発を実現できるかについては、懐疑的な専門家もいる。メキシコ競争力研究所(IMCO)のオスカル・オカンポ氏は「PEMEXには資金力も経験も不足している。非在来型鉱床の開発を成功させるには、資本の投入と数百本に及ぶ坑井の掘削が必要だ」と述べた。エネルギー分野のコンサルタントであるラムセス・ペチ氏は、メキシコの天然ガス消費を賄うだけの国内生産を行うには、年間360億~450億ドルの投資が必要と試算している(「エル・フィナンシエロ」紙4月9日付)。2026年度の歳出計画(2025年9月25日記事参照)では、PEMEXの予算額は約299億ドル(5,174億ペソ、1ドル=17.3ペソで計算)となっている。

(加藤遥平)

(メキシコ)

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