2026年度歳出計画、福祉とエネルギー関連への支出増大
(メキシコ)
メキシコ発
2025年09月25日
メキシコ大蔵公債省が9月8日に国会に提出した歳出計画によると、2026年度(暦年)の歳出総額(実質価格)は、前年度比9.6%増の10兆1,937億ペソ(80兆5,302億円、1ペソ=約7.9円)だった。そのうち、計画的支出(一般会計)が8.7%増の7兆947億ペソ、金融コストなどの特別会計が3兆990億ペソとなっている。一般会計の内訳をみると、経常的経費が6.6%増、年金経費が4.1%増、投資的経費が24.3%増、全体で8.7%増となる(添付資料表1参照)。
支出を項目別にみると、経常的経費のうち補助金支出は総合福祉政策の拡充で前年度比13.3%増加し、投資的経費の中でもインフラ整備に対する実物投資も13.8%増となった。省庁別予算(添付資料表2参照)をみると、福祉省が16.3%増で、前年と同様に連邦行政機関の省庁で最大の予算規模となり、6,745億ペソに上った。また、奨学金を所管する公共教育省も10.1%増となり、エドガー・アマドール・サモラ大蔵公債相が発言した「全ての国民のため、まず貧しい人々から」というスローガンのように、福祉政策に重点が置かれた歳出計画となっている。また、エネルギー省は93.4%増の2,674億ペソと急増し、石油公社(PEMEX)も11.4%増となった。エネルギー省の予算の急増は、連邦政府からPEMEXへの2,635億ペソの資金移転が理由とされており、PEMEXは過去の債務や銀行融資の償還に充てるとしている。一方で、新政権で名称が変更された科学人文技術イノベーション省は4.7%増にとどまったほか、外務省や経済省は前年と同額となり、技術革新や経済・外交関連の予算は据え置かれたかたちだ。
専門家は歳出における鉄道への投資偏重に疑問を呈す
メキシコ政府は優先的に取り組む政策を定めており、社会福祉政策は無拠出制年金の支給や、奨学金などを中心に合計で9,871億ペソとなっている。一方で、インフラ整備などの実物投資は全体でも9,601億ペソとなっており、インフラ投資よりも社会福祉政策により多くの資金が充てられている。さらに、実物投資における主要政策は新鉄道の建設(1,045億ペソ)やマヤ鉄道(300億ペソ)、PEMEX(2,472億ペソ)への投資が主であり、港湾や空港の近代化に向けた投資が欠けているとの指摘もある。民間シンクタンクのメキシコ競争力研究所(IMCO)のバレリア・モイ所長は、「2026年度経済パッケージはかろうじて均衡を保っているだけであり、それ以上は目指していない」として、医療や教育への投資が不十分な点や、公共投資は鉄道に焦点が当てられていることを批判した。また、「この予算の基盤は脆弱(ぜいじゃく)であり、メキシコ経済の成長の欠如を表している」と評した(「IMCO」9月16日付)。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
ビジネス短信 c002f9159b35e33d