米ウィスコンシン州で、ライフサイエンス分野の日米連携を探るフォーラム開催

(米国、日本)

シカゴ発

2026年04月27日

米国ウィスコンシン大学マディソン校で4月22日、「UW–ジャパン・ライフサイエンス・フォーラム」が開催された。本フォーラムは、日米の産学関係者を対象に、ウィスコンシン日米協会が主催し、ライフサイエンス分野における研究開発および事業連携の可能性を議論する場として実施された。約40人が参加し、大学発研究や商業化支援に関する講演に加え、遺伝学・生化学ラボなどの学内施設の視察が行われ、研究開発から実証・応用までを一体的に担う同大学のエコシステムが紹介された。

講演の中で特に注目されたのは、生物医学用ブタ研究・イノベーションセンター(Center for Biomedical Swine Research and Innovation)のディレクターであるターニャ・ドミンコ教授による、大動物モデルを用いた臨床前研究の取り組みだ。同センターは、解剖学的・生理学的にヒトと近いブタを活用した臨床前試験の拠点として、基礎研究からヒトへの臨床応用に向けた「最後の橋渡し」を担う機能を有している。ブタは特に臓器サイズや循環器系の特性がヒトと類似していることから、医療機器や細胞治療の実証において高い再現性を持つモデルとされる。マウスなどの小動物で得られた知見をそのままヒトに適用することが難しい中、大動物モデルは臨床応用に向けた検証に不可欠な実験対象として位置付けられている。

同センターの特徴として、心血管疾患、代謝疾患、がんなどを対象に、画像診断や外科的手法を含む、ヒトと同等の医療環境下での検証を実施している点が挙げられる。さらに、iPS細胞を用いた再生医療分野では、同一の遺伝背景を持つ細胞と個体を組み合わせた「シンジェニックモデル」を構築し、免疫抑制に依存しないかたちで細胞治療の有効性を評価するなど、より実臨床に近い検証手法の高度化が進められている。加えて、遺伝子改変技術と組み合わせたがんモデルの構築や、ヒト細胞を組み込んだ臓器生成(異種移植)に関する研究も進展しており、臓器不足という世界的な課題への対応策としての可能性も期待される。これらは単なる基礎研究にとどまらず、医療機器開発や創薬、個別化医療に直結する応用研究の領域として位置付けられる。

ウィスコンシン州は、大学・医療機関を中核として、創薬・医療機器分野のみならず、臨床前研究やトランスレーショナル研究(注)の基盤整備を通じてバイオ産業全体の競争力強化を図っており、ジェトロも2025年11月にミッションを派遣した(2025年11月14日記事参照)。本フォーラムは、講演および施設視察を通じて、同州の戦略的な取り組みと研究開発基盤の実態を具体的に示す機会となった。

写真 講演の様子(ジェトロ撮影)

講演の様子(ジェトロ撮影)

写真 ラボ視察の様子(ジェトロ撮影)

ラボ視察の様子(ジェトロ撮影)

(注)大学などでの基礎研究を臨床に実用化するための橋渡し研究を意味する。

(井上元太、マット・フェイグリー)

(米国、日本)

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