バッテリー過剰在庫の再利用を手掛けるクリング・システムズに聞く
(スウェーデン、EU)
ロンドン発
2026年04月15日
2045年までのカーボンニュートラル達成という法的拘束力を持つ目標を掲げるスウェーデン。同国の政府系機関であるスウェーデンエネルギー機関(SEA)は、化石燃料に依存しない電源構成と充実した研究環境を要因に、同国を持続可能なバッテリー生産において最も有利な立場にある欧州諸国の1つとしている。ジェトロは、バッテリーの循環型経済の促進を手掛けるクライメートテック系スタートアップであるクリング・システムズ(Cling Systems、以下:クリング)
のウィリアム・ベルグ創業者兼最高経営責任者(CEO)に、同社の取り組みについてインタビューを行った(取材日:3月26日)。
ウィリアム・ベルグ氏とのオンラインインタビューの様子(ジェトロ撮影)
クリングはバッテリーの循環システム確立を目的に2020年に設立された。設立当初は電気自動車(EV)バッテリーの収集・取引を中心に、関連業者や整備工場からバッテリーを集めていたが、事業を拡大し、バッテリーパックやモジュールも取り扱うようになった。その理由は、未使用バッテリーパックやモジュールの過剰在庫に大きな市場があることが分かったからだという。多くのOEM(注1)や製品メーカーが需要変動により過剰在庫を抱えるため、そのバッテリーの再利用(repurpose)に向けて世界中の買い手と結びつける取引市場の形成に事業移行した。現在は主に世界各国のOEMが抱える高品質かつ未使用の過剰在庫を買い手に仲介することで、新品より安く高品質品を入手できるルートを提供している。
クリングは以前、セカンドライフ(リサイクル)バッテリー事業に注力していたが、バッテリー価格の急落により市場性が弱まり、現在は同事業から撤退している。その理由として、新品が安価かつ保証付きで流通するようになり、技術・検査・再認証に高コストがかかるセカンドライフバッテリーが競争力に欠けたことや、保証や性能の標準化が難しいことを挙げた。ただし、将来的には大規模定置用エネルギー貯蔵システム(ESS)から初期交換された大量のモジュールが発生し、それらが安価に流通し、グローバルサウスなど労働コストの低い地域で活用される可能性はあると、ベルグ氏は述べた。
EUのバッテリー規制(注2)については、「実務的にはハードルが高く市場の自由度を阻害する」と同氏は評価。特にセカンドライフ分野では、厳しい認証要件・拡大生産者責任(EPR、2025年12月22日記事参照)が流通や再販を難しくさせ、業界関係者は過度設計だと感じているという。バッテリーパスポート(注3)も、実務的な価値が見えにくく、現場の声と乖離(かいり)していると指摘した。
(注1)Original Equipment ManufacturingまたはOriginal Equipment Manufacturerの略語で、委託者のブランドで製品を生産すること、または生産するメーカーのこと。
(注2)詳細は、調査レポート「EUバッテリー規則とドイツを中心としたバッテリー生産・リサイクルの動き」(2023年11月)を参照。
(注3)2027年2月より導入予定の、バッテリーのライフサイクル全体にわたる追跡可能性、透明性、および持続可能性を確保するための電子記録。LMT(電動自転車・スクーター用)バッテリー、2キロワット時(kWh)を超える産業用バッテリー、EVバッテリーに対して義務化される(2025年3月21日記事参照)。
(バリオ純枝)
(スウェーデン、EU)
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