米関税コストの大半は米国の企業と消費者が負担、欧州中銀調査

(米国)

ニューヨーク発

2026年04月01日

欧州中央銀行(ECB)が3月30日に公表した経済報告外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、米国の関税措置がもたらすコスト転嫁の実態を浮き彫りにした。同報告によれば、関税導入に伴う追加コストの大部分は、輸出元企業ではなく、米国内の輸入業者や消費者が負担している。関税コストの約3分の1が既に消費者に転嫁されていると算出した。

米国が2025年に実施した広範な関税措置を巡り、そのコスト帰属に関する議論が続いている。トランプ政権は輸出者側がそのコストを吸収すると主張しているが、専門家の分析では実態が異なる。ECBの分析によれば、輸出元企業の値引きによる関税コストの負担はわずか5%にとどまっており、残りの約95%が米国内で負担されている。この数値は2026年2月にニューヨーク連銀が発表した結果外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますとほぼ同様の数値だ。

輸入価格への転嫁は、輸入量にも大きな影響を与えている。関税導入後、米国の輸入は価格ベース(関税分を除く)・数量ベースのいずれでみても、減少した。特に、数量ベースでみた場合の影響が大きく、全製品の価格弾性値の平均は実にマイナス3.7となった(注1)。一方、現在も1962年通商拡大法232条に基づく関税が課されている、鉄鋼・アルミニウムや自動車・同部品などの製品はこの値が0.43と全体に比して低くなっている。この差は、相互関税の影響により新たに輸入が停止された製品が広範に生じたことを示唆している。

また、自動車分野では、中国、EU、日本などからの輸入量が減少した一方で、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)を活用したカナダやメキシコからの輸入量が有意に増加したため、関税措置は地域の貿易構造やサプライチェーンにも大きな影響を与えたとされる。

関税コストの消費者への転嫁率は、3分の1程度にとどまっていると試算されているが、関税措置が長期的にわたって維持される場合、最終的には消費者の負担割合が5割超に上昇する可能性があるとされている。輸出側の値引きが限定的にとどまる場合、米国企業の最終的なコスト負担割合は約4割となることが見込まれ、消費者のみならず在米企業にも大きなコスト上昇圧力となることが予想される。企業がこのコストを負担しきれない場合には、消費者への価格転嫁がさらに進む可能性もある。消費者物価指数における財価格の上昇率は、ここ2カ月の間、前年同月比1%程度で推移(2026年3月12日記事参照)しており、2025年秋ごろと比較すると伸び率はやや鈍化し始めているが、依然として価格転嫁が実施される可能性があることを示唆している。

しかし、米国の家計状況は一部で既に深刻な局面を迎えている。クレバー不動産による負債額および負債に対する意識調査(注2)によれば、米国では負債の保有が常態化しており、負債を抱える者のうち借金による生活への弊害を実感している割合(77%)や日常生活に支障をきたすほどのストレスを抱えている割合(46%)が高い。また、負債を抱える者の92%が支出の削減といった生活スタイルの犠牲を払っているにもかかわらず、半数が「この1年間で負債によるストレスが増加した」と回答しており、家計の逼迫状況がうかがえる。

関税引き上げや地政学的なイベントなどによって、期待インフレ率が上昇すると、消費者マインドが落ち込みやすい。家計にとって、身近な財の価格が上昇することは死活問題となる。

(注1)ある商品の価格が1%変動した際、その商品の需要量または供給量が何%増減するか示した数値のこと。トランプ関税措置における価格弾性値は、関税が1%ポイント引き上げられるごとに輸入数量が3.7%減少したことを示した。

(注2)対象は全米の成人1,000人。調査実施日は2026年1月29日。

(加藤翔一、樫葉さくら)

(米国)

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