サウジアラビア鉄道、東西結ぶ新物流ルート5本を開設へ
(サウジアラビア)
リヤド発
2026年04月16日
サウジアラビア鉄道公社(Saudi Arabia Railways:SAR)は4月10日、サプライチェーンの効率向上と多様な輸送手段の統合を目的として、5つの新物流ルートを開設すると発表した。新ルートは、ペルシャ湾沿岸の港湾と同国中部・北部地域を結ぶとともに、紅海沿岸の港湾や同国北部の近隣諸国へと延びるもので、東西を結ぶ物流ネットワークの強化を目指す。これらのルートでは、鉄道輸送と道路輸送を組み合わせた複合輸送ネットワークが活用されるとしている。
この取り組みは、サウジアラビアの「国家運輸物流戦略(NTLS)」および国家改革戦略「ビジョン2030」の方針に沿ったもので、同国を世界的な物流拠点として確立することを狙いとしている。新ルートの運営は、リヤド・ドライポートを中核に、ダンマーム、ジュベイル、ラス・アルハイル、アル・カージ、ハーイル、アル・クライヤットに位置する主要貨物ヤードを含む統合システムを通じて行われる。
このような物流インフラ整備により、石油化学製品や鉱物資源の輸送が円滑化され、国内の工業拠点が国際的な海運会社と直接接続される。これにより、輸送時間の大幅な短縮が見込まれるほか、主要な工業・鉱業分野における物流の信頼性向上も期待されるとしている。SARのバシャール・アル・マリク最高経営責任者(CEO)は、「これらの新ルートによって道路から数千台規模のトラック輸送が削減され、交通の安全性向上や二酸化炭素排出量の削減につながる」と強調している。
こうした動きの背景には、近年高まる中東地域の地政学的リスクと、国際物流の不安定化がある。2026年に入ってからの中東情勢の悪化を受け、ホルムズ海峡では実質的な通航制限が発生し、原油や資源のみならず、コンテナ貨物を含む世界の物流に大きな影響を及ぼしている。ホルムズ海峡や紅海といった海上チョークポイントへの依存リスクが顕在化する中、陸上輸送や鉄道を活用した代替物流ルートの重要性は一段と高まっている(2026年4月10日記事参照)。
中東地域では、紅海ルートの混乱やペルシャ湾周辺の緊張を背景に、港湾間を鉄道や道路で結ぶ内陸物流ルートの整備が進められている。サウジアラビアは、東はペルシャ湾、西は紅海に面する地理的優位性を生かし、港湾、鉄道、内陸物流拠点を連結することで、海上輸送に過度に依存しない物流体制の構築を急いでいる(2026年4月14日付地域・分析レポート参照)。
今回のSARによる新物流ルートの開設は、こうした国際物流環境の変化への対応策として位置付けられる。東西を結ぶ陸上物流回廊の整備は、同国の中東・アフリカ・欧州・アジアを結ぶ中核的ハブとしての機能強化につながる可能性がある。
(林憲忠)
(サウジアラビア)
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