ジェトロ、中東諸国に関する報告会を開催、今後の情勢は不透明

(日本、中東、アラブ首長国連邦、イスラエル、イラン、サウジアラビア、世界)

調査部中東アフリカ課

2026年04月10日

ジェトロは4月10日、「第2回・中東諸国における近況報告会」と題して、最新の中東情勢に関するセミナーを開催した。日本企業など約150人が参加した。

講師のジェトロ・ドバイ事務所の植田一全次長は、中東情勢について、米国とイランの2週間の停戦発効後、恒久的な合意につながるかどうかに注目しているとした。ホルムズ海峡の通航など双方の提示する条件にすれ違いがあるほか、議論に隔たりが残っているという。停戦が不調に終わった場合、情勢悪化が長期化するリスクがあると指摘した。

なお、イランからは、湾岸諸国の中でもアラブ首長国連邦(UAE)への攻撃が多く、4月初旬現在、多くの日系企業の駐在員が現地から退避していると報告。一方、UAEのショッピングモールなどでは多くの店舗が開店しており、主に現地在住者などで混雑も見られるという。現地で予定されていたイベントや展示会は、4月時点ではキャンセルもある。UAEのエミレーツ航空、エティハド航空などは運航しており、5月以降のUAEでの展示会はホームページ上では実施する方向だが、状況は不透明だ。

なお、地域の重要拠点だったドバイの効率的な行政手続きなどの魅力は残るものの、地政学リスクの上昇により、情勢安定後も中東の日系企業の立地や投資には影響が出る可能性があると指摘した。湾岸諸国などで、ビジネス面では復旧・復興需要も見込めるという。また、外交上は、湾岸諸国は、第三国として中国へ接近する可能性もあるとした。

ジェトロ・リヤド事務所の林憲忠所員は、サウジアラビアおよび周辺国における物流事情、特にアジアがエネルギー供給の8割を依存するホルムズ海峡の重要性とリスクについて解説した。

ホルムズ海峡の封鎖により、サウジアラビア東岸のペルシャ湾に船舶が滞留しているという。また、紅海沿いサウジアラビア西岸のジッダ・イスラム港などで貨物が集中しているとした。なお、紅海の通航においてはイエメンの親イラン武装組織フーシ派が攻撃を示唆しており、懸念もある。

ペルシャ湾外のオマーン湾側の代替ルートとしては、UAEのコールファッカン港(主に貨物など)、フジャイラ港(主に資源など)、オマーン北部のソハール港などの港湾がある。一方、攻撃やGPS妨害などのリスクもあり、納期の遅れやコスト上昇は想定されるという(衝突後コンテナ運賃が約3倍になった例も)。なお、中東地域の陸上輸送は機能しており、保税輸送も可能だが、輸送の容量や輸送および通関の混雑、トラックおよびドライバー不足、国境越境時に時間を要するなどといった課題が出てくる可能性もあると説明した。航空物流の正常化にも、当面は時間がかかる可能性があるとした。

なお、新たにオマーンからサウジアラビアへの道路が2021年に開通したという。長期的には、鉄道を含む陸上ルートの拡充にも注目されているとした。

中東における軍事衝突の関連情報は、イスラエル・米国とイランの衝突を巡る中東情勢関連情報を参照。

(久保田夏帆、井澤壌士)

(日本、中東、アラブ首長国連邦、イスラエル、イラン、サウジアラビア、世界)

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