マクロン大統領、リチウム生産で産業主権確保へ

(フランス、中国)

パリ発

2026年04月27日

フランスのエマニュエル・マクロン大統領は4月22日、フランス中部アリエ県エシャシエール市にある工業用鉱物の生産加工大手のイメリス(Imerys)・セラミックス・フランス(以下、イメリス)の工場を訪問し、同社が進めるリチウム生産プロジェクトを視察した。

イメリスが進める「エミリ(Emili)」プロジェクトは、2030年から年間3万4,000トンの水酸化リチウムを生産する計画で、年間約70万~150万台分の電気自動車(EV)用バッテリー需要に対応できる見通しだ。

マクロン大統領は現地で行った演説で、イメリスの同鉱床が世界4位の規模である点に言及し、戦略的資源であるリチウムをフランスおよび欧州域内で確保する意義を強調した。EV分野での中国など特定国への依存を減らすことにつながるとの認識を示した。

また同大統領は、政府の産業政策について、「競争力と雇用創出」「産業・資源の主権」「脱炭素」の3点を同時に実現する必要があると指摘した。気候対策を優先するあまり主権や生産能力を失うことも、逆に競争力を理由に環境対応を後退させることも、いずれも持続可能ではないと述べた。

EV政策をめぐっては、10年前には欧州でのバッテリー生産は困難とみられていたが、現在はフランス国内に4つのギガファクトリーが整備されていると説明した(2023年6月5日記事参照)。イメリスのリチウム事業により、資源採掘から精製、電池生産までのサプライチェーンの上流部分も国内で確保できるようになるとし、産業構造の転換が進んでいるとの認識を示した。

政府は現在、全国で150件の戦略的産業プロジェクトを支援しており、イメリスのリチウム生産事業もその代表例の1つに挙げられる。同大統領は、これらのプロジェクトがテクノロジー・イノベーション、製造業、エネルギー・環境、農業、健康分野に広がり、総投資額は710億ユーロ、雇用創出は約3万人、63県が対象となる国家的規模の取り組みであると説明した。その上で、5年半という短期間で再建を成し遂げたパリのノートルダム大聖堂を引き合いに、「フランスの独立を支える産業の大聖堂だ」と表現し、産業プロジェクトの推進を一段と加速させる考えを示した。

(山崎あき)

(フランス、中国)

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