アルゼンチンで氷河法改正法が成立、鉱山開発にも弾み

(アルゼンチン)

ブエノスアイレス発

2026年04月15日

アルゼンチン議会下院は4月9日、氷河法(法律26639号)の改正案を賛成137票、反対111票、棄権3票で可決した。2010年9月に制定された氷河法は、水源や生物多様性の保護および科学的活動や観光振興などを目的に、氷河やその周辺の永久凍土地域(周氷河環境)を公共財と位置付け、あらゆる生産活動を制限していた。アンデス山脈沿いの鉱山も周氷河環境(地域)に含まれ、そのため開発が滞っていた。今回可決された改正法案は、主に重要な水源としての機能を有すると証明できたものに限って保護対象にするとしたものだ。

改正法案は2月26日に上院を通過しており、今回の下院での可決をもって成立したため今後は公布手続きに進むこととなるが、各種報道によると主な改正点は次のとおり。

  • 保護の対象を再定義し、水源としての機能を有する氷河および周氷河環境に限定する。これらの機能の有無の検証は、各州政府の権限に委ねられる。
  • アルゼンチン雪氷・氷河科学研究所(IANIGLA)は、これまで氷河を特定するなど重要な役割を果たしていたが、今後は氷河の登録が主たる業務となる。
  • 各州は、独自の基準に沿って保護の対象を判断できる。これまでは、全国で統一された科学的な基準と最低基準が用いられていた。
  • 国家氷河目録(インベントリー)に登録されている氷河および周氷河環境は原則、本法による保護を受ける。ただし、環境当局が、これらが重要な水源としての機能を有さないと認定した時点で、保護の対象から外れる。しかし、環境保護基本法やその他の関連法令による一般的保護は引き続き適用される。
  • 各州政府が実施する環境影響評価(EIA)に基づき、認可する活動はケースバイケースで判断する。これまでは全般的な一律禁止制度が適用されていた。

改正前の氷河法は、氷河の定義を曖昧にしていたため、アルゼンチンにおける鉱山開発、特に銅鉱山の開発を妨げていた(2024年9月3日記事2025年8月26日記事参照)が、同法改正は鉱山開発の弾みとなり得る。ハビエル・ミレイ大統領は、公式声明(スペイン語)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを通じて「従来の氷河法は、保護すべき氷河が存在しない地域においても鉱業活動を禁止するといった非合理的な解釈を招いていた。これらは憲法第41条や州の原始的帰属権を規定する第124条に反していた」「アルゼンチンの発展を阻止しようとする環境保護団体は再び敗北し、国外の組織の干渉も失敗した」とし、議会の決定を歓迎した。

他方、4月10日付現地紙「パヒナ12(電子版)」によれば、アルゼンチン中部のラ・パンパ州のセルヒオ・シリオット州知事は、今回の改正は違憲だとし、その施行を阻止する目的で集団的差し止め請求(アンパロ)を提起すると発表した。同州には氷河も重要な鉱山開発計画も存在しないが、農畜産業が盛んな州であり、同知事は州を流れる唯一の河川であるコロラド川の環境に重大な影響を与える旨を説明している。また、国際環境NGOのグリーンピースをはじめ、国内のあらゆる環境保護団体も、水資源の保護を掲げ、今後も氷河法の改正に抗議していく意向を示している。

写真 改正前の氷河法により鉱山開発が遅れていたサン・フアン州鉱山地域(ジェトロ撮影)

改正前の氷河法により鉱山開発が遅れていたサン・フアン州鉱山地域(ジェトロ撮影)

写真 4月4日、ブエノスアイレス市内で氷河法の改正に抗議するデモ隊(ジェトロ撮影)

4月4日、ブエノスアイレス市内で氷河法の改正に抗議するデモ隊(ジェトロ撮影)

(山木シルビア)

(アルゼンチン)

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