スイスのグレンコア、アルゼンチンで銅鉱山開発案件の大型投資奨励制度の適用申請

(アルゼンチン、スイス)

ブエノスアイレス発

2025年08月26日

スイスの資源メジャーのグレンコアは8月18日、同社がアルゼンチンのカタマルカ州で進めるアグア・リカと、サン・フアン州で進めるエル・パチョンの2つの銅鉱山開発プロジェクトに対する大型投資奨励制度(RIGI)の適用をアルゼンチン政府に申請した。RIGIは、2億ドル以上の新規投資案件を対象に、所得税と輸出入税の減免や資本取引規制の例外措置の適用などの恩典を投資家に与える制度だ。

同社によると、前者の開発に約40億ドル、後者の第1フェーズの開発に約95億ドルを投じ、両案件合わせて建設段階で1万人以上、操業開始後は2,500人以上の直接雇用を見込んでいる。アルゼンチン政府はこれまでのRIGI申請案件を公表していないが、ルイス・カプート経済相によると、今回の案件を含めてこれまでに20案件が申請され、総額は336億ドルとなっている。報道や申請者自身の発表によると、銅鉱山開発案件でRIGIの適用申請が明らかになっているのは、カナダのマッキュアンがサン・フアン州で開発を進めるロス・アスレスのみだ。今回の申請により、アルゼンチンでの銅鉱山開発がいよいよ動き始めるとみられる。

アグア・リカは、銅、金、モリブデンをかつて生産していた鉱山アルンブレラから約40キロ離れた場所に新たな鉱山を開発し、ベルトコンベアで鉱石をアルンブレラまで輸送する。アルンブレラの鉱石処理施設をそのまま利用できるため、鉱山の開発に要するコストと時間が節約できるとされている。

他方、サン・フアン州での銅鉱山開発には課題もある。氷河法(法律26639号)は、水源の保護を目的に氷河やその周辺の永久凍土地域の開発を制限する法律だが、氷河の定義が曖昧で、鉱山開発を妨げているとの声がある。ハビエル・ミレイ政権は氷河法の修正を試みている。同政権が最初に立法化に成功した「アルゼンチン人の自由のための基盤と出発点に関する法律」(通称、基盤法、オムニバス法)の最初の法案には氷河法修正が含まれていたが、野党との交渉を経て内容が削られる中で、氷河法の修正案も削除された。鉱山開発への期待が高まる中、現地報道によると、同政権は氷河法を修正する新たな政令を準備しているとされる。

(西澤裕介)

(アルゼンチン、スイス)

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