サウジアラビア、石油施設の復旧と増産で供給不安の緩和を図る
(サウジアラビア)
リヤド発
2026年04月16日
中東情勢の緊張が続く中、サウジアラビアは、石油インフラの早期復旧とOPECプラス(注1)を通じた生産調整により原油供給の維持に取り組んでいる。イランからの攻撃リスクに直面する状況下でも、迅速な復旧対応に加え、OPECプラスによる増産合意を組み合わせることで、国際原油市場における供給不安の緩和を図る考えを示している。
サウジアラビアのエネルギー省は4月12日、中東情勢悪化以降の攻撃により影響を受けた同国の石油施設が短期間で回復したと発表した。紅海とペルシャ湾岸を結ぶ東西パイプライン(注2)は、一時的に日量約70万バレルの輸送能力を喪失したものの復旧が進み、4月12日現在は設計上の最大能力である日量700万バレルで稼働しているという。また、日量30万バレル規模の生産減となっていたマニファ油田(注3)についても、生産は全面的に再開された。同省は、クライス油田(注4)では最終的な補修作業が引き続き行われているとしつつも、同国国営石油会社サウジアラムコが供給継続に向けた対応を実施したと説明した。これにより、国内外市場向けのエネルギー供給の信頼性と継続性が強化され、世界経済の下支えにつながるとしている。
供給体制の回復を背景に、サウジアラビアはOPECプラスの枠組みの下で、生産調整を通じた市場対応にも関与している。同国を含むOPECプラス主要8カ国は、2026年5月の原油生産量を日量20万6,000バレル引き上げることで合意した(2026年4月14日記事参照)。原油価格が高水準で推移する中、産油国側は段階的な増産を通じて、市場の変動を抑制する考えを示している。
一方、国内市場では、原油価格の上昇や地政学的緊張にもかかわらず、燃料小売価格はおおむね安定的に推移している。サウジアラムコが4月に発表した燃料小売価格によれば、ガソリン91(レギュラー)は1リットル当たり2.18リヤル(約92円、1リヤル=約42.4円)、ガソリン95(ハイオク)は同2.33リヤルと据え置かれた。ディーゼルや灯油についても価格は維持されており、国際原油市場の変動が直ちに国内燃料価格に転嫁される状況にはなっていない。
4月14日のリヤド市内のガソリンスタンド販売価格(ジェトロ撮影)
「ロイター」(4月6日付)によると、サウジアラビアは2026年5月積みのアラビアンライト原油(注5)の、アジア向け公式販売価格(Official Selling Price:OSP)について、プレミアムをオマーン/ドバイ平均比で過去最高となる1バレル当たり19.50ドルに引き上げた。アラビアンライトのOSPは、地中海、北西欧州、北米向けでも大幅に上昇しており、全地域でプレミアムが拡大している。
原油市場の不安定な状況が続く中、原油価格の高止まりは短期的には財政面でプラスに作用する一方、上昇が長期化した場合には、世界経済やエネルギー需要に影響を及ぼす可能性がある。このため、サウジアラビアは今後も、OPECプラス内での調整を通じて価格動向を注視しつつ、生産政策と国内市場の安定の両立を図っていくことになる。
(注1)OPEC加盟国のイラン、イラク、クウェート、サウジアラビア、ベネズエラ、リビア、アラブ首長国連邦(UAE)、アルジェリア、ナイジェリア、ガボン、赤道ギニア、コンゴ共和国の12カ国と、非加盟の産油国のアゼルバイジャン、バーレーン、ブラジル、ブルネイ、カザフスタン、マレーシア、メキシコ、オマーン、ロシア、スーダン、南スーダンの11カ国で構成する。
(注2)サウジアラビア東部州アブカイクおよびガワールに存在する大規模石油コンビナートから、西部ヤンブー工業団地へのエネルギー供給、および紅海側からの原油輸出を目的として建設された、東西に横断する全長約1,200キロメートルの石油パイプライン。同パイプラインは、1975年から1980年までの開発5カ年計画に基づき整備が進められ、1981年に完成した。
(注3)サウジアラビア東部のペルシャ湾沿岸の浅海域に位置する大型油田。主に重質原油を生産しており、供給調整力の観点から、同国の生産政策上重要な役割を担う。
(注4)サウジアラビア東部州に位置する、同国有数の大規模陸上油田。
(注5)サウジアラビアが生産・輸出する原油の中で最も代表的で取引量の多い「アラビアンライト」は中質原油とされ、ガソリンや軽油など幅広く精製可能。サウジアラムコが生産・販売し、同社が毎月発表する公式販売価格(OSP)によって取引される。
(林憲忠)
(サウジアラビア)
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