トルコ閣僚、中東情勢の影響とエネルギー回廊を含む長期的戦略を語る

(トルコ)

イスタンブール発

2026年04月21日

トルコのメフメット・シムシェキ国庫・財務相は4月10日、同国コジャエリ県で開催された国際経済サミット2026に出席し、イスラエル・米国とイランの衝突が仮に沈静化した後もトルコや世界経済に一定の影響が残ると発言した。一方で、トルコは、2025年6月に発生したイスラエルとイランの軍事衝突などの危機を大きな損失なく乗り越えてきた強い基盤があると強調。引き続き「インフレ抑制を最優先課題」とし、今回の燃料価格の高騰に対し価格調整を実施 、インフレ抑制を優先させたとしている。

また、今後、防衛産業を核とした産業高度化、グリーンとデジタル転換、データセンターや人工知能(AI)関連投資の誘致、世界的サプライチェーン再編によるトルコの鉄道・物流・エネルギー供給の回廊化と関連の大規模投資、自由貿易協定(FTA)などを通じた新貿易回廊の構築など長期的な戦略機会を見据えていると明らかにした。具体的案件として、イラクのバスラからトルコに至る全長1,250キロメートルの高速道路・鉄道・石油パイプライン構想や、湾岸諸国から欧州へ通じる新たなエネルギー輸送回廊建設の可能性を挙げた。

トルコのアルパルスラン・バイラクタル・エネルギー・天然資源相も、3月25日に国営アナドル通信のインタビューで、同国ではホルムズ海峡を経由した中東からの石油輸入依存度は約10%であり、天然ガスの輸入はこれまで行っていないと述べ、現時点でエネルギー確保に問題ないとした。アックユ原子力発電所(注1)の操業開始を2026年最大の目標とし、トルコ国営石油会社(TPAO)による国内およびソマリア、リビアなど海外での資源探査を強化し、エネルギー自給率の向上や調達多角化を目指すとしている。また、トルコのエネルギー・ハブ化を目指す中長期的な計画として、トルクメニスタン産天然ガスをカスピ海経由でBTC石油パイプライン(注2)に接続する構想が発表された。加えて、既存のイラク・トルコ・パイプライン(ITP)(注3)をバスラまで延伸する計画やカタールを起点にトルコ経由で欧州へ輸送する天然ガスパイプライン構想、サウジアラビア・ヨルダン・シリア・トルコをつなぐ、再生可能エネルギーを含むエネルギー送電網接続プロジェクトなども発表された。

トルコのエネルギー回廊化に期待する専門家の声は多い一方で、短期的には建設コストの大きさに懸念を示す意見もみられる。こうした中、トルコの国際投資家協会(YASED)は、ホルムズ海峡危機のトルコに対する影響について、中東諸国からの輸入依存は限定的なものの、アルミニウム(全体の42%)、ポリエチレン(38%)、ポリプロピレン(34%)など化学素材の一部などのトルコ製造業を支える中間財の輸入依存が高く、価格変動などの影響を受けやすいとした。また、トルコと同地域の貿易関係はトルコの輸出超過の構造で、かつ地理的近接性や陸上輸送が主流のため海上輸送混乱への耐性はありつつ、農産品を中心とした輸出動向に影響する可能性があると評価した。

(注1)ロシアの支援を受けてトルコ南部メルスィン県に建設中の、同国初の原子力発電所。

(注2)アゼルバイジャンのバクーを起点に、ジョージアのトビリシを通り、トルコのジェイハンまでをつなぐ総延長約1,770キロメートルのパイプライン。

(注3)イラク北部のキルクークとトルコ南部のジェイハン港を結ぶ原油輸送パイプラインで日量150万バレル以上の輸送能力を持つ(2025年10月7日記事参照)。

(井口南)

(トルコ)

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