トルコ、イラク原油の輸入再開

(トルコ、イラク、ロシア、米国)

イスタンブール発

2025年10月07日

トルコのアルパルスラン・バイラクタル・エネルギー天然資源相は9月27日、X(旧Twitter)の自身の公式アカウントで、トルコ・イラク原油パイプラインがトルコの国営石油ガス・パイプライン輸送会社(BOTAŞ)による運用で再稼働し、トルコにイラク原油供給が再開したと投稿した。

このパイプラインは、イラク北部のキルクークとトルコ南部のジェイハンを結ぶもので、2023年2月の地震の影響で供給が停止していた。今後の輸送量などは、現状では不明なものの、1日当たり100万バレル以上の原油輸送容量があるという。このため、トルコのエネルギー安全保障と、トルコ経由での供給ハブの位置づけ強化が期待されている(9月28日付国営アナドル通信)。イラクのムハンマド・シヤーウ・スーダーニー首相も、イラク石油省がクルディスタン自治区の油田で生産した原油を引き取り、このパイプラインを通じてトルコに輸出すると正式に認めている(9月25日付国営アナドル通信)。

トルコは天然エネルギー資源に乏しく、輸入依存している一方、欧州やイスラエル(注)など周辺国への中継輸出を行い、エネルギー供給ハブとなることを目指している。ロシアからも石炭、天然ガス、石油製品などを輸入しており、原油はトルコにとってロシアが最大の輸入相手国となっている。なお、イラク原油の輸入再開により、ロシア原油への依存を低減させる可能性があるという報道もある。

今回の再開の背景には、9月25日に米国で行われたトルコと米国の首脳会談で、ドナルド・トランプ米大統領がトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領に対し、ロシアからの原油購入を停止するように要求したことも関係するとみられている。今回、エルドアン大統領は9人の大臣を含む高官と米国を訪問して、会談や交渉に臨んでおり、エネルギー関連では、2国間で長期的な液化天然ガス(LNG)供給契約と戦略的民生用原子力協力覚書(MOU)を締結した(9月28日付国営アナドル通信)。

トルコには、今回再開したパイプラインのほかに、ロシア、ブルガリア(経由してウクライナや欧州諸国にも連結)、ギリシャ(経由してさらに欧州諸国にも連結)、シリア、イラン、アゼルバイジャンとジョージアの3カ国パイプライン(BTC)などもある。原油のほかに天然ガス、LNGの中継ハブとなっている。

また、トルコは地理的優位性を生かし、エネルギー供給だけでなく、物流のハブ拠点化も目指している。

(注)トルコは現在、イスラエルとの貿易を停止している(2024年5月7日記事参照)。

(井口南)

(トルコ、イラク、ロシア、米国)

ビジネス短信 31c4c02a460b8515