ラオス、中東情勢による燃料危機をEV化促進の契機へ
(ラオス、中東)
ビエンチャン発
2026年04月07日
2月28日の米国およびイスラエルによるイランへの攻撃を端緒として、中東紛争が勃発した(特集「イスラエル・米国とイランの衝突に関する中東情勢、各国の反応」参照)。化石燃料を100%輸入に依存し、国内備蓄も乏しいラオス(注1)は、大きな影響を受けた。
内陸国ラオスは、化石燃料の大半を、特に隣国タイからのタンクローリー輸入に依存している(注2)。タイ政府が3月上旬に自国備蓄優先で、燃料輸出を一時停止する方針を発表すると、ラオス国内では瞬く間にパニック買いが発生した。その後、タイがラオスとミャンマーを例外として、輸出継続を認める方針を確認したことで、混乱は一旦沈静化した。
しかし、タイ国内でも供給逼迫が続き、ラオス向けの流通量は十分に回復せず、輸入不足が顕在化した。3月11日付のラオス政府統計によれば、全国2,538カ所のガソリンスタンドのうち、40%超の1,061カ所が燃料枯渇により営業停止に追い込まれた。首都ビエンチャンでは、営業を続けているガソリンスタンドにバイクや自動車の長蛇の列が生じ、給油までに2時間以上を要する例もあり、生活や経済活動に大きな混乱が生じた。
さらに、価格高騰も深刻だ。ディーゼルの小売公定価格は、2月中旬の1リットル当たり1万9,810キープ(約145円、1キープ=約0.0073円)から、3月中旬には3万2,330キープ、4月3日には5万1,360キープへ急騰し、約1カ月半で2.6倍に達した。燃料不足と価格高騰は、農村部では作付けの遅れを、都市部では建設や物流など幅広い分野に影響を及ぼしている。
ソーンサイ・シーパンドン首相は3月13日、燃料消費の抑制と経済的影響緩和を目的とした緊急首相命令「第40/PM号」を発令した。同命令は、政府機関に対し、地方出張の削減、オンライン会議への移行、一般職員の交代制勤務や在宅勤務の導入などの徹底した節約を求める。また、生活必需品の買いだめや便乗値上げを禁止し、違反事業者には営業許可停止などの厳格な処分を科す方針を示した。
一方、今回の燃料危機は、政府が進めるエネルギー転換(2022年4月12日付地域・分析レポート、2023年3月30日付地域・分析レポート参照)を加速させる契機となっている。ガソリンの入手難と価格高騰を受け、市民の間では中国製電動バイクや電気自動車の購入が増加した。特にビエンチャン都内のYADEAなどの電動バイク販売店では、品薄状態となっている。都内では、新設のEVバス「バス・ラピッド・トランジット(BRT)」を無料や特別運賃で運行し、公共交通への転換を促している。今回の燃料危機を契機として、国家レベルでのEV普及が加速している。
新設されたEVバス(BRT)(ジェトロ撮影)
(注1)政府備蓄量は発表されていないが、ラオス商工省は3月2日時点で、1,000万リットル以上の燃料が全国で利用可能だと発表している。これは、国内消費の2日分程度と推定される。また、2024年のラオス燃料ガス協会の統計によると、1年間に約19億リットル(1日520万リットル相当)を輸入した。石油輸入会社はそれぞれ備蓄タンクを有しており、例えばラオス燃料公社(LSFC)は2,600万リットル分の貯蔵能力を有する。
(注2)ラオス商工省統計によると、ラオスは2025年にガソリン1億9,300万ドル、ディーゼル10億4,000万ドルを輸入した。うち、タイからはそれぞれ1億9,200万ドル(全輸入額の99.5%)、10億900万ドル(同97.0%)を輸入した。
(山田健一郎)
(ラオス、中東)
ビジネス短信 09b727f9d7b5968e





閉じる