オーストラリア、中東情勢を受け燃料供給に危機感、アジア各国との交渉を加速

(オーストラリア、中東)

シドニー発

2026年03月26日

中東情勢の緊迫化と、ホルムズ海峡の通航が実質停止している影響を受け、オーストラリアでは燃料供給に対する危機感が高まっている。オーストラリアは精製石油製品の80%以上を輸入に依存しており、その大部分は中東産原油に依存するアジア各国から供給されている(添付資料表参照)。一部地域のガソリンスタンドでは、燃料の枯渇が報じられる中、オーストラリア連邦政府は、現在の供給量は十分であるとしつつ、買い占めの抑制を呼びかけている。加えて、オーストラリア・競争消費者委員会(ACCC)による大手燃料供給企業の反競争的行為の疑惑に関する調査や、国内供給体制を統括する「国家燃料供給タスクフォース」の設置、戦略燃料備蓄の20%分の放出など、一連の危機対応策を矢継ぎ早に講じている。

現時点で、特に輸入依存度が高いディーゼル燃料の小売価格は、3月22日の週平均で1リットル当たり2.82オーストラリア・ドル(約319円、豪ドル、1豪ドル=約113円)となり、イラン紛争開始前と比較して約56%上昇している。この価格上昇は、農業、鉱業、輸送業など幅広い産業におけるコスト増につながっている。

加えて、農業は燃料に加え、肥料原料の供給の一部も中東に依存していることから、事態の長期化による影響への懸念が高まっている。オーストラリア農林水産省は、「国家食料安全保障戦略」の策定の一環として、ディーゼル燃料のサプライチェーンにおける脆弱(ぜいじゃく)性の調査を優先的に実施する方針を発表した。今回のイラン紛争を受け、短期的な対処にとどまらず、中長期的な燃料の安定供給確保に向けた議論が進みつつある。

クリス・ボーウェン気候変動・エネルギー相は、3月22日に出演したテレビ番組で、4月から5月に到着予定の燃料輸送船80隻のうち、シンガポール、韓国、マレーシアからの6隻がキャンセルされたことを明らかにした。供給の先行きに不透明感が高まる中、アンソニー・アルバニージー首相は、3月23日の連邦議会で、アジア各国に対して、安定的な輸出継続を働きかけるため、オーストラリアの液化天然ガス(LNG)輸出を交渉上の重要なカードとして活用する意向を示した。同日、オーストラリアとシンガポールは、両国の精製石油製品およびLNGの安定供給に向けた連携を強化する旨の共同声明を発表した。同声明は、オーストラリア・シンガポール包括的戦略的パートナーシップ(CSP2.0)(2025年10月14日記事参照)に基づくもので、重要物資の貿易に関する取り決めの交渉を加速する狙いがある。また、韓国やマレーシアなどその他のアジア各国とも協議を進めているとされている。

(渡部卓人)

(オーストラリア、中東)

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