競争力持つリトアニアのレーザー産業、半導体・防衛・宇宙で用途拡大

(リトアニア)

調査部国際経済課

2026年03月09日

リトアニアのレーザー・フォトニクス産業は、研究機関を起点とする技術蓄積と研究者・技術者の独立起業の広がりを背景に、独自の産業集積を形成している。ジェトロがリトアニア・レーザー協会外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますへ2月27日にヒアリングしたところ、同国のレーザー分野は1960年代に始まり、現在は関連企業数が60社を超えるという(添付資料図参照)。同国レーザー産業の特徴は、コーティング、光学部品、オプトメカニクス、光源、加工技術まで、バリューチェーンの主要要素が国内に集積している点にある。

同協会会長で、物理科学技術センター(FTMC)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますでレーザー技術分野を統括するゲディミナス・ラチュカイティス博士は「リトアニアはレーザー・フォトニクス分野全体を広く追うのではなく、強みのある領域に重点を置いている」と説明した。具体的には、その中核が「超短パルスレーザー分野」だという。同技術は、パルス幅がピコ秒(1兆分の1秒)やフェムト秒(1,000兆分の1秒)単位で発振されるレーザーだ。超微細加工や表面改質に活用される。リトアニア企業は大量生産向けの最終製品ではなく、製造装置に組み込まれる高付加価値な部品・技術に強みを持つ。

同国レーザー産業全体としての輸出比率は90%超と高い。国内市場が小さいことから、海外市場を軸に、産業規模が年平均成長率(2020~2024年)で16%と高い伸びを維持してきた。同国レーザー産業の初期から重要な市場の1つが、日本だ。科学用途に加え、日本企業のLED製造工程など産業用途で採用されたことが、日本展開のきっかけになった。同博士は「日本市場は、品質要求が高い市場として位置付けてきた」という。

近年は、半導体、防衛、宇宙でレーザーの用途拡大が進む。半導体分野では先端パッケージングを念頭に、レーザー加工、化学処理、金属配線形成などを組み合わせた技術開発に取り組む。同国では、欧州半導体法(2023年8月2日記事参照、注1)に関連する「チップ・コンピタンス・センター(Chip Competence Center)」(注2)の枠組みも活用し、研究機関・大学・企業をつなぐかたちで人材育成や技術基盤の強化を進めている。欧州の防衛費拡大を受け、防衛・宇宙分野では同国レーザー通信スタートアップのアストロライト(Astrolight)など、一部企業で艦船間や衛星間のレーザー通信を開発するといった動きがみられる。

こうした産業形成の背景には、「研究機関発のスピンオフ企業の蓄積に加え、大学・研究機関などを基盤とする人材のつながりが、協業を支える土台になっている」と同博士はいう。一方、人材確保や海外市場での用途開拓は課題だ。同博士は「日本企業との用途開発・技術補完型の協業に期待している」と述べた。

(注1)EU域内の半導体の研究開発・製造能力の強化や、サプライチェーンの強靭(きょうじん)化、対外依存の低減などを目的とするEUの政策枠組み。

(注2)EU半導体法関連の取り組みの一環として各国で整備される半導体支援拠点。企業や大学、研究機関に対し、技術支援、技能・人材育成、実証・連携支援などを行う。

(峯裕一朗、金杉知紀、遠山宗督)

(リトアニア)

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