IATA、中東情勢悪化がジェット燃料の供給に影響と指摘、欧州で特に影響大きく

(中東、欧州)

調査部中東アフリカ課

2026年03月10日

国際航空運送協会(IATA)は3月6日外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます、2月28日に中東地域で激化した紛争で、世界のエネルギーの流れが混乱し、ジェット燃料の安全保障上の脆弱(ぜいじゃく)性が露呈したと報告した。IATAは、世界の石油供給の約20%が通過するホルムズ海峡でタンカーの通航隻数が70~80%減少し、事実上通航停止状態となった(2026年3月4日記事参照)結果、ペルシャ湾からの供給に大きく依存する地域を中心に、ジェット燃料を含む石油製品の供給に即時の影響が生じたと指摘した。

特に欧州は、ジェット燃料需要の25~30%をペルシャ湾に依存しており、ホルムズ海峡の通航停止の影響が大きいという。タンカー輸送能力の急減や保険料の高騰で供給は急速に逼迫し、ジェット燃料価格も上昇している。また、欧州の在庫は通常1カ月強分にとどまり、代替供給源となるインドや中国も、ホルムズ海峡を通過する原油の84%がアジア向けに割り当てられているため、自国の域内需要が優先され、輸出余力が限られている。さらに、紛争地域を航行するための追加保険料の上昇や、南アフリカ共和国の喜望峰を迂回する輸送時間の増加が、コストと供給不安を一段と深刻化させているという。

なお、2025年第4四半期の中東地域からの1日当たりのジェット燃料供給量の平均(単位:1,000バレル)は次のとおり。

  • 北西ヨーロッパ:177
  • アフリカ:100
  • 紅海(注1):34
  • 地中海(注2):31
  • 南アジア:17

IATAは、今回の混乱を受け、ジェット燃料の安定供給を守るために、(1)戦略備蓄の強化、(2)調達先の分散、(3)政府・航空会社・精製業者の連携強化が急務であると指摘。ジェット燃料は大規模な代替が難しく、航空業界は混乱の影響を強く受けるため、政策対応が欠かせないとした。長期的には、持続可能な航空燃料(SAF)の開発に加え、供給ルートや調達先を増やして途絶に備える体制を強化することが重要だとしている。

現地情報は外務省海外安全ホームページ「中東の海外安全情報一覧外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます」やジェトロ・ビジネス短信特集「イスラエル・米国とイランの衝突に関する中東情勢、各国の反応」も参照。

(注1)スエズ運河を通らずにペルシャ湾から紅海、その後大部分がエジプトに供給されるジェット燃料。

(注2)南欧州と東地中海地域に供給されるジェット燃料。

(加藤皓人)

(中東、欧州)

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