国民投票で、気候変動対策に関する国民発議は否決、連邦個人課税法案は可決
(スイス)
ジュネーブ発
2026年03月16日
スイスで3月8日に国民投票(注1)が行われ
、3つのイニシアチブ(国民発議)(注2)と1つのレファレンダム(注3)が実施された。本短信では、気候変動対策のための基金を設立し毎年一定額の拠出を求める国民発議と、結婚した夫婦と未婚夫婦の課税の差異を是正する国民発議の対案としての連邦法案(公平課税イニシアチブに対する間接的な対案)の是非を問う国民投票を取り上げる(他の案件は2026年3月16日記事参照)。
スイスは気候・イノベーション法により、2050年までの温室効果ガス排出量のネットゼロを決定しており、パリ協定に基づき気候保護への貢献に努めている。連邦政府は現在、気候保護とエネルギーシステムの再構築のために、毎年約20億スイス・フラン(約4,060億円、CHF、1CHF=約203円)の資金を拠出可能で、同資金は太陽光発電パネルの設置や、石油暖房システムからヒートポンプへの交換への補助金として活用できる。今回の国民発議は、連邦政府に対し気候変動対策のための基金設立と毎年一定額の拠出を求め、気候変動とその影響への対策に大幅な資金拡充を求める内容。スイスのGDPの0.5~1%に相当する金額を毎年拠出すべきとしていた。これは約40億~80億CHFに相当する。同基金の目的は、連邦政府による温室効果ガス排出量の削減や、経済的かつ効率的なエネルギー消費、再生可能エネルギーの拡大、二酸化炭素(CO2)回収・貯留、生物多様性の促進などを支援することである。この国民発議は、社会的に公平な資金調達と実施を求めていた。国民投票の結果、反対が70.71%で否決された。
スイスでは現在、結婚した夫婦は共同課税、未婚の夫婦は個別課税という規定になっており、税率も異なっている。この不平等な扱いを撤廃するため、連邦議会は個人課税に関する連邦法案を可決し、同法案が今回、レファレンダムとして国民投票の採決にかけられた。連邦法案では、結婚した夫婦も将来的には個別に課税されることになる。各個人が自身の所得と資産に対して課税され、全員に同じ税率が適用。結婚した夫婦と同等の未婚の夫婦は、将来的に同じ税額を支払う内容となっている。多くの夫婦が同法案の恩恵を受けるが、中にはより多くの税金を支払わなければならない夫婦も存在する。子どもを持つ夫婦やひとり親の負担が過度に重くならないように、連邦直接税における児童控除が引き上げられる。同法案により、納税者の連邦直接税負担は年間約6億3,000万CHF軽減されると推定されている。各州も個人課税を導入する必要があり、また独自の税率と児童控除を設定することになる。同法案は、結婚した夫婦と未婚夫婦の課税の差異を是正する国民発議「婚姻状況に関わらない個人課税(公平課税)」の間接的な対案である。国民投票の結果、個人課税に関する連邦法案については54.26%が賛成し、可決となった。
(注1)スイスでは年に最大4回、国民投票が実施される。
(注2)有権者10万人以上の署名を18カ月以内に集めることを要件として、国民による憲法改正の提案が可能。
(注3)議会が承認した法案に対し、有権者5万人以上の署名を100日以内に集めることを要件として、その是非を問う国民投票。
(田中晋)
(スイス)
ビジネス短信 c200ebcce31cc417






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