国民投票で、現金およびSBC受信料に関する国民発議はいずれも否決
(スイス)
ジュネーブ発
2026年03月16日
スイスで3月8日に国民投票(注1)が行われ
、3つのイニシアチブ(国民発議)(注2)と1つのレファレンダム(注3)が実施された。
本短信では、現金に関する国民発議と政府対案、およびスイス放送協会(SBC)の受信料引き下げの国民発議の結果を取り上げる(他の案件は2026年3月16日記事参照)。
スイスでは、デビットカード、クレジットカード、決済アプリなどを用いたキャッシュレス決済が増加しているが、多くの人は現金を支払い手段として残したいと考えている。法律では現在、スイス国立銀行が現金供給の責任を負い、スイス・フラン(CHF)がスイスの通貨と規定されている。現金に関する国民発議は、現金の利用可能性とCHFをスイスの通貨として憲法に明記することを目的としている。この目的のため、連邦政府に対して、十分な量の硬貨と紙幣が常に流通していることを保証する義務を課すほか、CHFを他の通貨に置き換えることは、国民と州の同意がある場合のみ可能とする内容だった。連邦参事会(内閣に相当)と議会も現金供給とCHFに関する規定を憲法に明記することを望んでいたが、国民発議の提案内容には不適切な表現が使用されているとして、その文言に同意できず、既存の法律の文言に基づいた対案を提出した。国民投票の結果、対案のみが73.39%の賛成多数で可決された。なお、双方の提案が可決された場合に、どちらを支持するかについても投票がなされ、対案支持が62.63%で、国民発議支持の37.37%を大きく上回った。
スイスの一般家庭は現在、ラジオとテレビの受信料として年間335CHF(約6万8,005円、CHF、1CHF=約203円)という世界最高水準の負担額を支払っている。付加価値税(VAT)の課税対象となる企業も、売上高が50万CHF以上の場合、売上高に基づいて算出される受信料を支払っている。この受信料は主に、SBCの公共サービス運営財源として活用されている。SBCの受信料を200CHFに引き下げる国民発議に対し、連邦議会は対策の必要性を認識し、一般家庭の受信料を2029年までに段階的に300CHFに引き下げる法令改正案をすでに提示している。法令改正案では企業もコスト削減の恩恵を受ける内容となっており、2027年以降、VATの課税対象企業のうち、受信料を支払うのは20%程度となる。SBCは経費削減を行い、サービス内容は縮小しつつも質の高いサービスの提供を求められる。SBCの受信料を200CHFに引き下げる国民発議は、法令改正案以上にSBCへの資金削減を目指すもので、「SBCは一般市民にとって不可欠なサービスの提供に特化すべき」とし、さらにすべての企業の受信料を免除することも目指していた。国民投票の結果、受信料を200CHFに引き下げる国民発議は、反対が61.95%で否決された。
(注1)スイスでは年に最大4回、国民投票が実施される。
(注2)有権者10万人以上の署名を18カ月以内に集めることを要件として、国民による憲法改正の提案が可能。
(注3)議会が承認した法案に対し、有権者5万人以上の署名を100日以内に集めることを要件として、その是非を問う国民投票。
(田中晋)
(スイス)
ビジネス短信 751d2ac8941bf481






閉じる