中東の外交的解決に意欲を示すパキスタン

(パキスタン、中東)

カラチ発

2026年03月27日

中東情勢の悪化は、パキスタンの経済およびエネルギー安全保障にも影響を及ぼし始めている。エネルギー価格の高騰や国際物流の不安定化は、原油・天然ガス輸入への依存度が高いパキスタンにとって深刻な問題であり、エネルギー供給の停滞は、企業活動や国民生活に重大な影響を与えかねず、早急な中東情勢の沈静化が望まれる。実際、3月7日にはガソリン小売価格が約20%引き上げられ、22日からは高オクタン価ガソリンに限り、1リットル当たり200パキスタン・ルピー(約108円、1ルピー=約0.54円)の追加値上げが承認され、1リットル当たり最高609.99ルピーまで跳ね上がった。シャバズ・シャリフ首相は3月上旬、中東情勢の悪化による燃料不足を想定し、政府機関を対象とする緊縮措置を発表しており、エネルギー安全保障への警戒感を示している(2026年3月12日記事参照)。

こうした中、パキスタン政府は中東情勢の外交的解決に意欲を示している。シャリフ首相は3月24日、公式SNS〔X(旧Twitter)〕で、「米国およびイラン双方の同意を前提に、紛争終結と地域安定に向けた包括的対話を促進するため、パキスタンが協議開催国となる用意がある」と表明した。政府は一貫して対話と外交を重視し、当事国間の意思疎通を支援する立場を強調している。

一方、海外メディアは、米国特使がイラン側関係者と接触したとする報道と、イラン政府による全面否定を併せて伝え、両国の主張に齟齬(そご)があるとしている。また、パキスタン外交筋の話として、同国は複数の開催候補地の1つに過ぎず、停戦協議が首都イスラマバードで行われる可能性は高くないとの見方がある一方、米国特使のイスラマバード入りや月内の非公式協議の可能性を報じる向きもある。

米国はパキスタン輸出の約2割を占める最大の輸出相手国であり、パキスタンは米国に対し約36億7,700万ドルの貿易黒字を計上するなど、経済関係は緊密だ。他方、パキスタンは隣国イランとも、国内のイスラム教徒の宗派構成の違いによる緊張を抱えつつも、実務的な関係を維持してきた。今回の情勢を受け、国内ではイランへの支持を掲げるシーア派を中心に、反米・反イスラエルの大規模なデモが発生している。

戦争終結の見通しが不透明な中、パキスタン政府は経済再建を最優先課題に据えつつも、エネルギー安全保障を含む自国経済への間接的影響の緩和を視野に、中東情勢の改善に向けた建設的な役割を模索している。

(糸長真知)

(パキスタン、中東)

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