中東情勢悪化でパキスタン政府が緊縮措置
(パキスタン)
カラチ発
2026年03月12日
米国・イスラエルによるイラン攻撃(2026年3月2日記事、2026年3月9日記事参照)を受け、中東情勢が急速に不安定化する中、パキスタン政府は外部環境の悪化が国内経済に及ぼす影響を極めて深刻に受け止めている。シャバズ・シャリフ首相は3月9日、全国向け演説を行い、燃料需給逼迫や財政負担増への備えとして、政府部門全体に及ぶ臨時の緊縮措置を直ちに導入すると発表した。
首相の説明によれば、当面の省エネ対策として、中央政府機関の勤務体系を週4日制へ移行し、追加の休日を設ける。また、公務員の半数を在宅勤務へ切り替え、教育機関については2週間の休校措置を実施する。銀行業務は通常運営を維持する方針だ。さらに、政府が使用する公用車の燃料支給を2カ月間で50%削減し、政府車両の60%を運行停止とするなど、燃料節約を最優先に据えた姿勢が際立つ。政府は首相演説に先駆けて、3月7日にガソリン小売価格を20%程度引き上げることを発表していた。カラチ大学をはじめ一部の教育機関では、燃料価格の高騰を受け、講義の一部を当面オンラインのみで行うことを同日に決めている。
緊縮措置の一環として、政府高官の経費削減も求められ、連邦内閣は2カ月間の給与返上を決定した。国会議員の報酬も半減するとし、月額給与30万パキスタン・ルピー(約16万8,000円、1パキスタン・ルピー=約0.56円)を超える一定レベル以上の政府高官は2日分の給与を公益目的で拠出することとなった。政府支出については、車両・家具・空調設備などの新規購入を原則禁止し、海外出張も国益上、不可欠な場合を除き停止される。会議はオンラインを優先し、断食明けの食事会「イフタール」など行事の自粛も求められた。
これらの措置は、中東危機による燃料価格高騰や物流混乱が、国内経済に及ぼすリスクに備える緊急的対応であり、今後予想されるオイルショックへの事前対策とみられる。国内では2024年後半以降、低調ながらも経済が回復の兆候を見せつつ、インフレ率は1桁台に抑えられていたが、中央銀行は一方で「国際情勢の急な変化などによるインフレリスクへの不安は拭い切れない」として、政策金利は10.5%の高水準を維持していた。皮肉にも今回の中東情勢の悪化は、中央銀行の懸念が具現化されるかたちとなった。政府が示した省エネ・倹約策の実効性は未知数だが、進出日系企業の活動への影響は避けられず、今後の政策の動向を注視する必要がある。
(糸長真知)
(パキスタン)
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