AI医療スタートアップ企業、米国展開の課題と機会を順天堂キャンパスで議論

(米国、日本)

シカゴ発

2026年03月16日

ジェトロは3月9日、順天堂大学と共催で「J-StarX AI Medicalコース成果報告会-日本と米国におけるデジタルヘルス・イノベーションの今-」を同大学本郷キャンパス(東京都文京区)で開催した。米国の医療機関メイヨー・クリニックの関係者や、同プログラムに参加した日本のヘルスケアスタートアップ企業などが登壇し、日本発デジタルヘルス技術の米国展開の可能性と課題について議論した。

冒頭、順天堂大学の代田浩之学長が開会あいさつを行い、同大学が推進するオープンイノベーション拠点「GAUDI(ガウディ)」を中心とした産学連携の取り組みを紹介した。順天堂大学では6つの附属病院の臨床データを基盤に人工知能(AI)やデータサイエンスを活用した研究開発を進めており、医療ビッグデータを活用した新たな医療技術の社会実装を目指していると説明した。

講演では、メイヨー・クリニック・プラットフォーム・アクセラレートのディレクターであるジェイミー・サンズバック氏が、医療データプラットフォームを活用したイノベーション創出の取り組みを紹介した。同プラットフォームでは、匿名化された患者データを研究者やスタートアップと共有し、AIなどを活用した医療ソリューションの開発を支援している。現在、数千万件規模の患者データを活用可能としており、世界各国の医療機関と連携した医療データ活用を進めていると説明した。

イベントの中心となったパネルディスカッションでは、2025年度のJ-StarX AI Medicalコースに参加したスタートアップ企業が登壇し、米国市場への進出を目指す上での実務的な課題や戦略について共有した。まず、米国市場を目指す理由について、世界の医療市場の約半分は米国であり、グローバル展開を目指す上で米国を避けることはできないとの認識が示された。また、米国食品医薬品局(FDA)承認を取得し、米国での実績を確立することが企業価値の向上や資金調達にもつながるとともに、米国以外の市場への拡大にも寄与するとの指摘があった。

一方で、米国市場への参入には複数の高いハードルが存在することも指摘された。特に医療機器やデジタルヘルス分野では、FDA承認と保険償還の獲得という大きく2段階の審査構造があるため、事業化までのプロセスは長く複雑で、医療機関や保険者の意思決定構造、臨床データの取得(医療機関との臨床試験)、連邦や州の税制や規制なども踏まえた事業戦略が必要になるとの認識が示された(2025年8月18日付地域・分析レポート参照)。

写真 J-StarX AI Medicalコース参加企業によるパネルセッションの様子(ジェトロ撮影)

J-StarX AI Medicalコース参加企業によるパネルセッションの様子(ジェトロ撮影)

(井上元太)

(米国、日本)

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