S&P、サウジアラビアの内外通貨建て信用格付けを「A+」に引き上げ、見通しは「安定的」

(サウジアラビア、イラン、湾岸協力会議(GCC)、中東)

リヤド発

2026年03月17日

米国の大手格付け会社S&Pグローバル・レーティング(S&P)は3月14日、サウジアラビアの内外通貨建て信用格付けを「A+」で引き上げ、見通しを「安定的」と発表した。

同社によれば、安定的な見通しは、サウジアラビアが進めている経済の多角化、非石油部門の着実な成長、そして国内資本市場の発展が評価された結果だという。原油収入の減少により財政不均衡が拡大すると見込まれるものの、大規模インフラ投資の一部見直しにより、健全な財政バランスと対外収支を維持できると同社は分析している。また、長期外貨建ておよび現地通貨建ての非依頼型ソブリン信用格付け(注1)を「A」から「A+」に引き上げ、短期外貨建ておよび現地通貨建ての非依頼型ソブリン信用格付け「A-1」は据え置いた。送金・換金性(T&C)評価(注2)は「A+」から「AA-」へ下方修正された。

さらに、同社は2025~2028年の実質GDP成長率を平均4%と予測している。同期間の財政赤字はGDP比4.2%に達すると見込まれるが、これは経済多角化を後押しする変革的支出が主因で、同国は良好な純資産ポジションを維持すると予想している。

今回の安定的見通しは、同国の強力な政策対応能力を反映しているという。具体的には、原油輸出を東西パイプライン(注3)で紅海側へ迂回できる能力や大規模な石油備蓄能力が、中東地域で進行する紛争の影響を緩和しているとした。また、非石油部門の成長の勢いや、政府の適切な優先順位付け能力が、今後の経済および財政の安定を支えるとしている。また、2月末以降のイスラエル・米国とイランの軍事衝突については、イランによるサウジアラビアへの攻撃は、ほかの湾岸協力会議(GCC)諸国への攻撃に比べれば散発的で攻勢も弱く、サウジアラビアも大規模な報復を控え、防衛的な行動のみを取っていることに留意すべきとした。炭化水素部門への影響という点では、これまでのところ、サウジアラビアへの攻撃はラス・タヌラ製油所の石油生産にのみ影響を与えており、ほとんどの生産施設は影響を受けていないという。

同国は近年、複数の国際格付け機関から相次いで格上げを受けており、フィッチ・レーティングスもまた、同国の長期外貨建て発行体デフォルト格付け(IDR)を「A+」で据え置き、見通しを「安定的」と評価している(2026年1月20日記事参照)。

(注1)政府の依頼なしに格付け会社が独自に実施した格付けのこと。

(注2)国家が外貨での支払い(送金)や通貨の交換(換金)に対して課す規制や制約の度合いを評価する指標。

(注3)サウジアラビア東部州アブカイクおよびガワールに存在する大規模石油コンビナートから、西部ヤンブー工業団地へのエネルギー供給、および紅海側からの原油輸出を目的として建設された、東西に横断する全長約1,200キロメートルの石油パイプライン。同パイプラインは、1975年から1980年までの開発5カ年計画に基づき整備が進められ、1981年に完成。

(林憲忠)

(サウジアラビア、イラン、湾岸協力会議(GCC)、中東)

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