WTO漁業補助金協定が発効

(世界)

調査部国際経済課

2025年09月24日

WTOの9月15日付の発表によると、同日の一般理事会特別会合において、漁業補助金に関する協定(漁業補助金協定)が発効した外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます(注)。同協定はWTOにおける初の環境・持続可能性に関わる多国間協定であり、加盟国に対して、海洋魚類資源の枯渇を招く、有害な補助金の支出抑制を義務付ける内容となっている。

同協定が発効するにはWTO加盟国の3分の2に当たる111カ国の批准が必要となっており、WTOの発表によると、ブラジル、ケニア、ベトナム、トンガが批准書をWTO事務局に寄託したことにより発効に至った。日本は2023年7月に批准している外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

日本の外務省外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますによると、WTO設立以来、貿易円滑化協定に続く2例目となる付属書-Aの新規協定であり、今回の発効は「WTOのルール策定機能の意義を示したという点で重要」としている。

漁業補助金協定では、違法・無報告・無規制漁業(IUU漁業)につながる補助金の禁止などを定めている。また、開発途上加盟国に対する技術援助および能力開発援助を支援するための任意拠出の資金供与の仕組みの設置が定められている。

日本近海でも外国などによるIUU操業が問題視されているなか、同協定は海洋生態系の保護や食料安全保障の強化につながると期待される。日本は同協定に基づく基金に対し、全WTOメンバーの中で最初に拠出を行っている外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます

なお、同協定における過剰漁獲能力・過剰漁獲につながる補助金と資源管理措置に関する交渉は、インドなど一部の国が強く反対していることから、未合意のまま残されており、第2次交渉として引き続き議論される見込み。

(注)「WTOを設立するマラケシュ協定(WTO協定)」の付属書-Aに漁業補助金協定を追加する改正議定書が、受諾国の間で発効した。

(北見創)

(世界)

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