水素利用のモデル都市ユバスキュラ、旭化成がアルカリ水電解システムを設置

(フィンランド、EU、日本)

調査部国際経済課

2026年03月27日

旭化成は3月12日、セントラルフィンランドモビリティファンデーション(通称Cefmof、本部:フィンランド・ユバスキュラ、注1)の完全子会社であるセフモフハイドロジェンが運営するフィンランド初の商用水素ステーションで、1メガワット(MW)級のコンテナ型アルカリ水電解システム「アクアライザー・シーキューブ」の設置作業を開始したと発表した(2026年3月12日付同社プレスリリース参照外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。

今後、水電解システムの増設を段階的に進め、2026年7月ごろには水素製造を開始し、同年内に定常運転へと移行する計画。フル稼働時の生産能力は約400キログラム(kg)/日、1時間当たり約3台分の燃料電池車(FCV)を充填(じゅうてん)できるクリーン水素(注2)を製造する計画だ。

Cefmofは、水素ステーションのみならず、イベントでの水素サウナの提供などを通じてユバスキュラ市での水素利用の実装に取り組んでいる。同市は、2025年にフィンランドで初めて公共交通機関としてFCV(燃料電池車)バスを導入。バスの製造を手掛けたのは、ポルトガルのカエタノ・バス(Caetano Bus)だ。同社へは、三井物産が出資し、トヨタ自動車が燃料電池を供給する。

ジェトロがフィンランドで行った調査によると、同国のエネルギー別発電量は、再生可能エネルギー(56.3%)と原子力(39.1%)で95%を占める〔調査レポート「フィンランドのクリーンエネルギー・水素産業動向」(2026年3月)参照〕。そのため、フィンランドでは、電力の炭素集約度(注3)が低く、EUのグリーン水素認定要件(2023年6月30日記事参照)の1つである「追加性(注4)」が免除となる。他の加盟国と比較してグリーン水素製造のハードルが低く、潜在性が大きいとされる。他にも、送電網への接続や許認可の取得が迅速であるという強みが挙げられる。

エネルギー業界団体フィニッシュエナジー(Finnish Energy)のヘイッキ・リンドフォルス・エグゼクティブ・シニア・アドバイザーによると、フィンランド企業が電解槽に求める条件として「メンテナンスも含めて長期的で安定的な稼働が担保されていることではないか」と述べた(インタビュー日:2026年3月9日)。

旭化成のシステムは、そのような現地が求めるソリューションを提供するものだ。

(注1)Cefmofは、フィンランドのユバスキュラ市、トヨタ・カズー・レーシング・ワールド・ラリー・チームとトヨタ・モビリティ基金によって設立され、中央フィンランド地区の脱炭素化を水素の活用を通じて支援する現地社団法人。

(注2)二酸化炭素(CO2)排出削減に寄与する低炭素エネルギー由来の水素の総称。再生可能エネルギーを活用し、水を電気分解して製造される「グリーン水素」を含む。

(注3)エネルギー消費量単位あたりの二酸化炭素(CO2)排出量。

(注4)追加性とは、水素生産施設稼働の36カ月より前に稼働していない(追加的に設置された)施設で発電された再エネ電力の供給を受けること。

(板谷幸歩、半井麻美)

(フィンランド、EU、日本)

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