メキシコ政府、セクター別のUSMCA見直しに対する主張を公表
(メキシコ、米国、カナダ)
メキシコ発
2026年03月19日
メキシコ経済省は3月9日付のプレスリリースで、「米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)見直しのための公聴会の結果」を発表した(2026年3月17日記事参照)。その中では、30セクター別(注1)にパブリックコメントの回答が掲載されている(注2)。
全セクターでの共通認識は次のとおり。
- 域内の自由貿易、現行の原産地規則、紛争解決における第10章(注3)の規定を擁護する確固たる立場を維持すべき。
- USMCA の見直しは、その運用の最適化に焦点を当てるべきであり、実質的な再交渉は行わない。
- 鉱業、エネルギー、航空宇宙、観光、ソーシャルエコノミーなどの一部セクターは、同分野に特化した章の創設を提案。
- 法的予見性、エネルギーの確保、3国間の技術協力が、域内の競争力を強化するための柱である。
さらに、共通の懸念点としては次の項目を挙げた。
- 米国の1962年通商拡大法232条による追加関税
- 三角貿易(迂回輸出)に起因する不公正な競争
- 技術・衛生・環境問題における規制の非統一
- 重要な原材料の北米域外への依存
USMCAを3国間の生産ブロックとして強化し、第三国の不公正な参入に対する地域競争力を確保するため、技術・環境基準などの標準化を進める必要があるとした(セクター別の主張は添付資料表1参照)。また、同232条の追加関税など、米国の一方的な措置を回避する必要性を強調し、明確かつ均衡のとれた原産地規則を通じて、域内の生産統合を強化するべきとした。
原産地規則はセクターごとに異なる意見が存在
原産地規則については、セクターごとに視点が異なるとして、各セクターの主張を紹介した(添付資料表2参照)。自動車産業は現行制度を維持すべきし、規制強化を回避する必要性を主張した。さらに、いかなる調整においても最低3年間の猶予期間を求めた。また、タイヤ産業は域内の原材料不足を踏まえ、柔軟化を唱えた。化学、石油化学、プラスチック産業はアジアからの原材料の迂回輸出を防ぐため、HSコード28~39類の原産地規則の維持・強化を提案した。一方で、付加価値基準計算の柔軟化や、域内で入手不可能な重要部材を無関税で輸入できる例外措置により、業界の競争力および供給の継続性に悪影響を与えないように慎重に対応することを求めた。さらに、航空宇宙や航空機産業などの専門分野では、特殊合金、電子部品、その他ハイテク部品などは国際的に認可されたサプライヤーのみが部品を納入しており、輸入部材が多いため、域内調達比率の不均衡な増加は競争力に直接影響を及ぼすと指摘した。他方、鉄鋼・アルミニウム業界は、不公正な貿易慣行を防止するため、原産地規則およびアンチダンピング措置の強化を提案した。
同レポートでは、USMCA以外のメキシコ国内の問題についても言及した(添付資料表3参照)。自動車産業は通関の簡素化やデジタル化の推進を提唱し、農産品や木材、靴産業などは、規制の簡素化や3国間の認証連携を提案した。一方、鉄鋼・アルミニウム業界は、USMCA非加盟国に対する相互関税の導入と再生アルミニウムに関する具体的な産業政策の実施を提案したことが明らかになった。
(注1)30のセクターは次のとおり。1.鉄鋼・アルミニウム、2.航空・宇宙、3.農業、4.農業関連産業、5.自動車部品・タイヤ、6.飲料・加工食品、7.セメント、ガラス、セラミック、8.循環型経済、9.ソーシャルエコノミー、10.電子機器、11. エネルギー(炭化水素および電力)、12.医薬品、医療機器、化粧品、13.畜産、畜産チェーン、漁業、14.不動産・建設、15.クリエーティブ産業、16.乳製品および乳製品加工品、17.物流、18.電気機器製造業、19.鉱業、20.家具・紙製品、21.プラスチック・玩具、22.金属製品、金属加工、派生製品、23.化学、24.金融サービス、25.専門・ビジネスサービス26.繊維、靴、衣類、27.情報通信技術、28.観光、29.乗用車、30.大型車。
(注2)セクター別の回答割合では物流が11.4%、医薬品・医療機器・化粧品が7.3%、次にエネルギー(炭化水素・電力)が6.9%となった(添付資料図参照)。回答主体の属性は、企業が59.5%、業界団体(商工会議所、協会、評議会など)が36.8%、その他3.7%だった。
(注3)USMCA第10章は、貿易救済措置に関する章。アンチダンピング税、相殺関税、セーフガード関税などの貿易救済措置の利用に関する規定が記載されている。
(阿部眞弘)
(メキシコ、米国、カナダ)
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