米シンクタンク、米国とイスラエルのイラン攻撃による安全保障やエネルギー資源への影響を解説
(米国、イスラエル、イラン)
ニューヨーク発
2026年03月04日
米国シンクタンクの戦略国際問題研究所(CSIS)は3月2日、米国とイスラエルによるイラン攻撃に関するウェビナーを開催
した。ウェビナーにはCSISから3人が登壇し、これまでの経過を解説するとともに、安全保障やエネルギー資源の供給などへの今後の影響を展望した(注1)。
米国はイスラエルとともに2月28日から、イランへの攻撃を開始しており(2026年3月2日記事、2026年3月3日記事参照)、イランによる報復攻撃の対象は湾岸諸国全体に広がっている。エネルギー・地政学分野プログラムでシニアフェローを務めるクレイトン・シーグル氏は、石油や天然ガスの貨物を輸出するタンカーなど海運の損傷や、船舶への積載に必要な湾岸インフラの破壊による機能停止が(注2)、石油の供給途絶につながると述べ、いずれもすでに影響が発生していることを解説した。具体的には、サウジアラビア最大規模の製油所(1日当たり55万バレル生産)であるラス・タヌラや、世界全体の液化天然ガス(LNG)需要の約20%を輸出するカタールのラス・ラファンLNG輸出ターミナルといった、湾岸地域に所在する世界最大級のエネルギー輸出施設が、イランからの報復攻撃の対象となっていると例示した。
一方でシーグル氏は、このような状況下にかかわらず、(3月2日時点で)市場参加者らは、大規模な供給混乱のリスクに対し、「かなり楽観的に(構えているように)みえる」との見解を示した。その理由に、トレーダーが独自の情報網を通じて「情勢が政権外の専門家の予想よりも穏やか」であると認識している可能性があるとした。そのうえで、「大幅な原油価格上昇へと無自覚に突き進んでいるリスクが拭いきれない」との見解を示した。
なお、シーグル氏は、石油市場の価格上昇を抑える要素として余剰生産能力を挙げた。ただし、その生産能力を有するのはサウジアラビアとアラブ首長国連邦(UAE)に集中する。いずれもホルムズ海峡の上流に位置することから、同海峡が航行可能であるかがカギを握ると強調した(注3)。
また、防衛・安全保障部門プレジデントのセス・ジョーンズ氏はイエメンのフーシ派による活動が現時点で多く確認されていないことを懸念材料と指摘した。フーシ派は湾岸地域内の船舶やイスラエルおよび米国軍に対する攻撃能力を持つとし、同勢力の動向次第では、ホルムズ海峡に加え、バブ・エル・マンデブ海峡という重要なチョークポイントも脅威にさらされる可能性があると指摘した。
(注1)ウェビナーでは、CSISの防衛・安全保障部門バイス・プレジデント兼情報・国家安全保障・技術プログラム責任者のエミリー・ハーディング氏も登壇し、米国の諜報(ちょうほう)機関の活動の評価やサイバー攻撃などについて解説した。
(注2)具体的な事例として、保険会社側が当該海域での運航継続に対してより高い保険料を要求している点や、GPSの妨害により海峡を通過することが危険である点を挙げ、結果的に湾岸地域に停泊する多くの船舶が運航の指示を待つ状態で停泊していると解説した。
(注3)なお、複数メディアによると、イラン・イスラム革命防衛隊は3月2日、ホルムズ海峡を封鎖したことを、国営メディアを通じて発表した。一方、米国メディアのフォックスニュース(3月2日)は、ホルムズ海峡は封鎖されていない、と米国中央軍が述べたことを報じた。
(滝本慎一郎)
(米国、イスラエル、イラン)
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