韓国、改正労働組合法が施行、政府は定着を目指すも企業は警戒
(韓国)
ソウル発
2026年03月12日
韓国で3月10日、労働組合および労働関係調整法第2条・第3条の改正法(以下、改正労働組合法)が施行された。改正労働組合法は「黄色い封筒法」とも呼ばれ、2025年8月24日に国会本会議において議決された(同法の詳しい内容は、2025年9月2日記事参照)。
雇用労働部では、今回の法施行に伴い、次のような変化を想定している。
〇労働条件について実質的かつ具体的に支配・決定できる地位にある者は、直接の雇用主でない場合でも「使用者」に認定される。それにより、下請け企業の労働組合が元請け企業に対して交渉・対話を要求できるようになる。
〇労働争議(ストライキなど)の対象が広がる。労働条件に影響を及ぼす「事業経営上の決定」や「明白な団体協約違反」、例えば「整理解雇(リストラ)」や「構造調整に伴う配置転換」なども労働争議の対象に含まれることとなる。
〇裁判所が組合員の争議行為などに対する損害賠償責任を認定する場合、個別に責任割合を定めることになる。具体的には、組合内の地位や役割、争議行為への参加の経緯と程度、損害への関与度合い、賃金水準と損害賠償請求額、損害の原因と性質などを総合的に考慮して判断する。
政府は、施行初期の現場の混乱を最小限に抑え、予見可能性を高めるための措置として、「団体交渉判断支援委員会」(注)を設置することにした。さらに、雇用労働部傘下の地方官署を中心とした専門担当チーム(タスクフォース)を立ち上げる予定だ。
雇用労働部の金英勲(キム・ヨンフン)長官は、「改正労働組合法により、元請け・下請けの労使間の対話を制度化することで労使間の信頼が回復すれば、持続可能な真の成長が可能になる」と法改正の意義を強調した。
他方、産業界や学識者からは改正労働組合法に対する懸念が示されている。中央日報(3月9日付)は、例えば、労働争議の対象範囲拡大について、「産業界の現場では、『労働条件に及ぼす影響』の判断基準が依然として曖昧だという意見が多い。事業上のいかなる決定であれ、労働者の労働条件にある程度の影響を及ぼさざるをえない」「結局、労働組合は交渉を要求してくるだろうし、企業はその都度、労働委員会や裁判所の判断を仰ぐしかなくなる」と報じた。また、学識者のコメントとして、「労働条件に影響を及ぼさない構造調整や新技術の導入は、事実上存在しない。交渉やストライキによってフィジカルAI(人工知能)などの新技術の導入が遅れれば、産業競争力を失いかねない」と報じた。他方、朝鮮日報(3月10日付)は、「いわゆる『黄色い封筒法』の施行により、産業界の現場ではストライキの可能性が高まる。さらに、米国・イスラエルとイランとの衝突による原油価格上昇まで重なり、中小企業の生産量が減少し、コスト負担が増加するという懸念が強まっている」と伝えた。
(注)法律専門家および現場の専門家が参画する政府諮問機関。元請け・下請け関係における「使用者性」の有無など、実際の交渉で取り上げられる可能性が高い主要争点について、判断基準と方向性を示す役割を担う。
(橋爪直輝)
(韓国)
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