リトアニアのスタートアップ、防衛・宇宙向けレーザー通信分野で事業拡大
(リトアニア)
調査部国際経済課
2026年03月18日
NATOのスタートアップ育成枠組み、北大西洋防衛イノベーション・アクセラレーター「DIANA」(注1)の採択企業であるリトアニアのアストロライト
(Astrolight)は、防衛・宇宙向けのレーザー通信に携わるスタートアップだ。同社は2019年に、同国の公的研究機関である物理科学技術センター(FTMC)
からのスピンオフとして設立された。従業員は約30人で、8割以上がエンジニアだ。2026年2月27日に、現在の事業内容と今後の展望について同社にヒアリングを行った。
同社はレーザー通信事業を宇宙・地上・海上の全領域に広げており、複数の製品ラインを並行して開発している。宇宙向けには衛星間、衛星地上間の通信用端末「アトラス(Atlas)」を、地上向けには光通信ステーション「エルメス(Hermes)」を展開する。また、防衛用途では艦船向け戦術レーザー通信システム「ポラリス(Polaris)」を開発中だ。
地上、衛星、艦船間をつなぐレーザー通信のイメージ(アストロライト提供)
DIANAについて同社は、防衛・安全保障上の課題に資する新興技術の社会実装を後押しする枠組みで、採択企業には現場での実証機会や防衛関係者ネットワークへのアクセスが提供されると説明した。同社は2024年に参加申請し、約1,400社の応募の中から40社が選ばれる「フェーズ1」に採択された。さらに2025年には40社から上位10社が選抜される「フェーズ2」にも採択され、30万ユーロの助成を受けたという。
ポラリスは、艦船間および艦船と沿岸間の高速・秘匿通信を想定したレーザー通信システムで、妨害・検知されにくい点を特徴とする。「フェーズ2」で参加した海軍演習「REPMUS」(2025年9月18日記事参照)では、ポラリスが約2週間にわたり2隻間での通信維持に成功し、通信は周辺センサーから検知されなかった。また、大容量データ転送を実現し、雨や霧といった悪天候下でも動作したという。
REPMUSでテスト使用されたポラリスシステム(アストロライト提供)
宇宙分野では、衛星間通信や衛星地上間通信の拡大を見込み、端末と地上局の双方を開発している。衛星地上間の光通信についてはSDA規格(注2)との相互運用性を設計基準として重視しており、同規格に準拠した端末であれば、日本の衛星やレーザー端末とも通信可能との見方を示した。
対日連携の具体例として、同社の創業者で最高経営責任者のラウリナス・マチュリス氏は、日本のスタートアップとの宇宙用通信モデムに関する協業に言及した。実証は2026年内(同社見込み)に予定されており、宇宙データセンターの構築などを想定した大容量データ伝送ニーズを念頭に協力を進めているという。さらに同社は、欧州宇宙機関(ESA)が日本の宇宙通信基盤企業Space Compass(注3)と衛星間光通信に関するMOU
(覚書)を締結していることにも触れ、この分野で日欧連携がさらに進む可能性を示唆した。
(注1)NATO加盟国全体の研究者や起業家と連携し、技術の開発を支援するNATOの機関。DIANAは試験施設を有し、産学官、スタートアップ、イノベーターと協力して、防衛や安全保障の課題の解決を目指している。
(注2)米国防総省(DOD)(当時)が2019年3月に設立した宇宙開発局(SDA:Space Development Agency)が設定した通信規格。
(注3)衛星通信事業者スカパーJSATとNTT(日本電信電話)との合弁会社。
(峯裕一朗、山田恭之、金杉知紀、遠山宗督)
(リトアニア)






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