ポルトガル海軍、世界最大の海上ロボット・無人システム演習を実施
(ポルトガル)
マドリード発
2025年09月18日
ポルトガル海軍は2010年から毎年、「REPMUS」(注)と呼ばれる無人海洋システムのデモとプロトタイプ開発のための軍事演習を実施している。REPMUSは、産官学が一堂に会する世界最大規模の無人海洋システム演習プラットフォームで、その装備や手順、戦術を試験することで、運用能力の向上と技術開発を推進することを目的としている。
2025年の演習は9月8~25日に、首都リスボンの南方にあるセシンブラ沖とトロイア半島沖の海域で実施され、ポルトガル海軍に加え、産業界、大学、研究機関、NATO加盟国などから約2,000人の参加が見込まれている。また、NATOは加盟国やパートナー国間の合同訓練と相互運用性の強化を目的とした演習「ダイナミック・メッセンジャー」も同時に実施する。
ポルトガル海軍水路研究所(IH)所長のジョアン・パウロ・ラマーリョ・マレイロス少将によると、国土の西側と南側が大西洋に面し、マデイラ諸島やアソーレス諸島という遠隔の島しょ部を有するポルトガルにとって、海上防衛の強化は極めて重要だ。IHはGEOMETOC(地理空間・気象・海洋)分析と予測能力を有しており、REPMUSでの演習を通して特に作戦支援のための環境特性評価や予測データの収集・処理に大幅な向上を行った。あらゆる任務は無人航空機(UAV)や無人水上艇(USV)、無人潜水艦(UUV)など無人システムによって遂行される想定だ。環境特性評価や予測データの収集・処理の進展により、海上状況認識能力の向上、作戦地域情報で優位性の獲得ができ、UAV、USV、UUVでの任務遂行が後押しされ、要員リスク低減が可能となるという。
REPMUSは防衛分野のみならず、産業界や学術界にも注目されており、産学の連携を通じて、ポルトガルは防衛技術と価値創造の最先端に立つことを目指す。マレイロス少将は、軍事用途の新興技術は現代の海軍作戦が直面する課題に対応するため、実戦に近い環境下で検証され、作戦効果の向上、要員リスクの低減、コスト削減に貢献することが期待されていると話す。
REPMUS 2025に向けた海上試験中のポルトガル海軍の新しい無人水上艇(USV)(IH提供)
(注)Robotic Experimentation and Prototyping using Maritime Unmanned Systems(海洋無人システムによるロポット実験・プロトタイプ)の略。
(小野恵美)
(ポルトガル)
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