不燃認証を弾みに新市場へ、極薄ツキ板加工の森工芸に聞く

(日本)

調査部国際経済課

2026年03月17日

徳島で70年以上にわたりツキ板化粧合板を手掛けてきた森工芸外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますジェトロ活用事例も参照)。3代にわたり磨かれたツキ板(紙のように薄くスライスした木材)貼り技術は、木象嵌(もくぞうがん)を用いた一点物の工芸作品へと発展し、国内家具メーカーのみならず海外市場からも注目される。原料高騰などが事業の変化を迫るなか、さらなる販路拡大を目指し不燃認証も獲得した。こうした動向を受け、ジェトロは同社を訪問し、節目にある現在の姿と海外展開への思いを、森寛之取締役に聞いた(取材日:3月13日)。

森工芸は、代々受け継いだツキ板加工の技術を軸に、家具・建築内装材から美術工芸品まで幅を広げてきた。創業以来続く化粧板の製造に加え、森取締役が本格化させた木象嵌など一点物の木工芸は、近年では海外向けの主力商品となりつつある。ウッドショックによる原料高で国内向け素材の仕事量が縮小するなか、自社プロダクトを育ててきたことは、同社の売り上げ回復を支える柱となった。

工芸品づくりでは、伸縮性のある木を隙間なく貼り合わせる技術が核となる。この精密な積層技術は木象嵌にも応用され、同社以外では再現が難しいとされる意匠表現を可能にする。近年は工業用和紙との複合材や、接着剤自体の需要も伸び、家具修理や自動車内装、楽器向けなど多方面から引き合いがあるという。

不燃認証が広げる新市場

その技術力を後押しする新たな一歩が、2026年1月に取得した国土交通省の不燃材料認定だ。高級ホテルやブランド店舗では木質材料への不燃基準が厳しく、同社には図面段階で指名が入るにもかかわらず採用に至らない悔しさがあったという。長年の技術を積み重ねて得た認証は、そうした機会損失を解消し、市場拡大の足掛かりになる。

海外でも動きがあり、2020年1月のメゾン・エ・オブジェ出展を機に輸出を開始。現在では木製トレイを中心に英国、香港、シンガポール、米国などへと販路を広げた。総売り上げの約4割を自社プロダクトが占める中、このうち4分の1が海外向けという構成に、この5年で変わったことは大きい。最近では、ジェトロの出展支援プログラムをきっかけに引き合いのあった、カタールのバイヤーから高額受注が続いた。藍染めや光線貼りなど、徳島の素材文化と工芸技術を組み合わせた作品で、ターゲットを中東にも広げたい考えだ。

課題も少なくない。取締役ひとりが輸出実務と海外対応を担う状況は続いており、通関や検疫のトラブルも経験した。技術継承も喫緊の課題であり、「好きでないと続かない」高度な加工技術を担う人材は簡単には育たない。だが、不燃認証取得によって広がる市場と、徳島の蓼藍(タデアイ)による藍染めなど地域性を生かした素材表現を武器に、同社は次のステージを見据えている。中東をはじめ、高級内装の需要が高まる地域で、森工芸の意匠と技術がどこまで届くのか。磨き抜かれた職人技を携え、同社の挑戦は続く。

写真 森工芸の工房内ショースペース(左)と藍染め用の蓼藍(右)(ジェトロ撮影)

森工芸の工房内ショースペース(左)と藍染め用の蓼藍(右)(ジェトロ撮影)

(吾郷伊都子)

(日本)

ビジネス短信 2d392ffea9124455