トランプ米政権、海事産業再建に向け行動計画を発表、輸入貨物や外国船舶に新たな負担の可能性
(米国、日本、中国、韓国)
調査部米州課
2026年02月20日
米国のトランプ政権は2月13日、国内の海事産業基盤の再建に向けた政策提言をまとめた「海事行動計画
」を発表した。同計画には、米国港湾に入港する外国建造船舶に対する料金の導入を含め、日本企業の対米輸出に追加的なコストを生じさせる可能性のある措置が提言として盛り込まれている。提言された措置が直ちに施行されるものではないが、今後の政権の措置や議会の審議の動向を見通す上で重要な資料と位置付けられる。
同計画は、ドナルド・トランプ大統領が2025年4月に発令した海事産業基盤の再建に関する大統領令に基づき策定された。同大統領令では、大統領補佐官(安全保障担当)に対して行動計画の策定を指示していた(2025年4月11日記事参照)。今回発表された同計画では、米国内で稼働中の造船所の減少や、外国建造・外国船員・外国船籍の船舶が海上貿易の太宗を占める現状を挙げ、これが戦略的脆弱(ぜいじゃく)性につながっているとの認識を示した。同計画では、これら問題に対処するため、100項目を超える政策提言が列挙された。
具体策の1つとして、米国港湾に入港する外国建造船舶に対する料金(Universal Fee)の導入が提案された。徴収した料金は、これも同計画で新設が提言された「海事安保信託基金(Maritime Security Trust Fund)」に充当し、米国の造船能力拡充、船隊増強、産業基盤の強靭(きょうじん)化、海事分野の人材育成などに活用する。
また、既存の港湾維持料(Harbor Maintenance Fee)に相当する、「陸上港湾維持料(Land Port Maintenance Fee)」の導入も提言した。カナダやメキシコを通じて米国に運び込まれる商品に対し、商品価値の0.125%にあたる料金を徴収することを想定し、陸上港湾インフラの計画、設計、建設、維持、改修の費用に充てるとしている。
さらに、対米輸出量の多い国に対し、一定割合を適格な米国建造船舶で輸送することを段階的に義務付ける「米国海運優先要件(United States Maritime Preference Requirement)」を設定することも盛り込まれた。米国建造船舶の利用拡大を通じ、国内造船産業の需要喚起を図る狙いとみられる。
中国を念頭に置いた1974年通商法301条に基づく入港料金措置(2026年11月まで適用停止中、2025年11月7日記事参照)については、中国と協議を行うとともに、米国造船産業の活性化に向けて、韓国および日本との協力を継続する方針が示された。また、大型船舶用エンジン、減速機、推進軸、プロペラ、鍛造品・鋳造品、高強度鋼材、先端電子機器などの重要部品について、国内生産能力を強化し、外国依存度を引き下げる方針も示された。
同計画の終盤では、米国が海事分野での優位性を回復するには、政権の措置のみならず議会の立法を含めた包括的な取り組みが必要だとして、政権が独自に策定する法案や、議会に提出されている「繁栄と安全のための造船・港湾インフラ(SHIPS)法案」の検討の必要性にも言及した。
同計画については、SHIPS法案を主導するトッド・ヤング上院議員
(共和党、インディアナ州)およびマーク・ケリー上院議員
(民主党、アリゾナ州)が支持を表明しており、一定の超党派の支持があるとみられる。今後、同計画を踏まえた政権および議会の具体的な制度設計や立法動向が注目される。
(葛西泰介)
(米国、日本、中国、韓国)
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