IEEPA関税無効判決が各国・地域へ与える影響を考察、米国シンクタンク
(米国)
ニューヨーク発
2026年02月26日
米国の連邦最高裁判所は2月20日、国際緊急経済権限法(IEEPA)に基づいて大統領が関税を課すことはできないとの判決を下した。その後、ドナルド・トランプ大統領は、1974年通商法122条に基づく原則10%の課徴金の賦課などを発表した(注1)。これら一連の動向を受け、米国のシンクタンクは、各国・地域への影響などについて解説している。
ハドソン研究所シニアフェローのライリー・ウォルターズ氏(注2)は、2月23日に発表した論考
で、トランプ政権が日本、韓国、そして台湾と結んだ貿易投資協定に焦点を当て、今回の判決が大きな影響を与える可能性は低いと指摘した。その理由に、これらの国・地域が「合意した協定を履行する姿勢を持つ」ことを挙げた。また、122条による課徴金が1962年通商拡大法232条の対象品目には課されないことなどから、実際に122条課徴金が適用されるのは輸出の一部に過ぎないとして、これらの国・地域が「(貿易・投資協定の)交渉前の、より高い関税水準に戻ることは避けたい」意向を持つと分析した。一方で、今回の関税措置が各国・地域に対し一律に課されることから、「これらの国・地域は、(これまで20%程度の相互関税が課されていた)ベトナムやマレーシア、インドネシアなどに対する相対的優位性が失われた」と指摘した。
中国に与える影響について、戦略国際問題研究所(CSIS)でシニアアドバイザーを務めるウィリアム・ラインシュ氏(注3)は、2月23日に発表した論考
の中で、「対中関税の多くが、最高裁判決の影響を受けない232条や1974年通商法301条に基づいている」と指摘した。つまり、これらの根拠法に基づく関税は今後も継続して課されることから、他国・地域の状況とは異なると解説した。一方、米中首脳会談を控える中で「習近平国家主席にとっては、今回の判決がトランプ氏による(対中交渉のための)重要な手段を奪い、米国の立場が弱まったものと受け止める可能性が高い」との見方を示した。
トランプ政権が301条や232条などに基づいて関税措置を継続する方針を示している点について、ハドソン研究所非常勤シニアフェローのポール・スラシック氏(注4)は、米国通商代表部(USTR)による調査や公聴会の実施といった正式な手続きを経て、調査対象国・地域による「不公正な貿易慣行を立証することが要求される」ことを示した上で、政権が突然の発表で即座に関税を課すことはできないと解説した。外交問題評議会(CFR)でシニアフェローを務めるジェニファー・ヒルマン氏(注5)は2月23日に実施されたウェビナー
で、301条に基づく新たな関税措置が発動した後も、トランプ政権は関税賦課の対象を拡大する可能性を示した(注6)。
IEEPAに基づいて課された関税の還付については、ヒルマン氏は「関税が違法であると(最高裁が)宣言した時点で、輸入者が還付を受ける絶対的な権利は発生する」と述べた。一方で、ラインシュ氏は、今回のような規模で還付手続きが運用されたことはこれまでに「一度もない」とし、企業側が還付請求のために必要な書類を提出した後も、実際に還付されるまでは「長い待機時間を覚悟すべき」とした。
(注1)判決の概要については2026年2月24日記事、判決を受けたトランプ大統領による課徴金の賦課など一連の措置については2026年2月24日記事参照。
(注2)国際通商政策や投資規制、日本や台湾をはじめとした東アジアの政治情勢などが専門。
(注3)CSISの経済プログラム・ショール国際ビジネス講座の名誉主席研究員、通商政策や国際ビジネス、米中経済安全保障などが専門。
(注4)通商政策や米アジア関係などが専門、東京大学や早稲田大学などで客員教授を務めた。なお、スラシック氏の論考は、ハドソン研究所の上述の論考の中に掲載されている。
(注5)ジョージタウン大学ローセンター教授、米国通商政策やブレグジット、国際ビジネスなどが専門。
(注6)例えば、米国は2018年7月に301条に基づき追加関税を発動し、その後複数回にわたり対象品目の追加および関税率の変更が実施されている。ヒルマン氏の見解はこの点を念頭に置いたものと考えられる。
(滝本慎一郎)
(米国)
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