スウェーデンでスタートアップの祭典Techarena 2026開催、新ソーシャルメディアプラットフォーム構想に注目

(スウェーデン、EU)

マドリード発

2026年02月24日

北欧最大級のテック・スタートアップカンファレンス「Techarena 2026」が2月11〜12日の2日間、スウェーデン・ストックホルムのストロベリー・アリーナで開催された。スタートアップ創業者・投資家・政策立案者・事業会社など、120カ国以上から1万2,000人超が参加する見込みのイベントとされる。テーマは「New Era. Next Mindset.(新たな時代、新たな考え方)」で、人工知能(AI)・ディープテック・クリーンテック・ヘルステックなど多岐にわたるテーマを4つのステージで扱った。

写真 Techarenaの様子(ジェトロ撮影)

Techarenaの様子(ジェトロ撮影)

スウェーデンのウルフ・クリステション首相がステージに登壇し、EUのテクノロジー政策について踏み込んだスピーチを実施した。クリステション首相はEUの意思決定スピードの遅さを批判し、AI分野での規制緩和の必要性を訴えた。また、欧州の優良スタートアップが米国投資家に流出している問題を指摘し、EUとしての資本市場強化が急務であると述べた。また同カンファレンスでは、フランスのAIスタートアップ・ミストラル AIによるスウェーデンのエコデータセンター(EcoDataCenter)への約128億スウェーデン・クローナ(約2,176億円、1スウェーデン・クローナ=約17円)の投資も発表された。EU最大規模のAIファクトリー構想となる。

写真 スウェーデン首相の登壇セッション(ジェトロ撮影)

スウェーデン首相の登壇セッション(ジェトロ撮影)

注目セッションの1つとして、欧州発のソーシャルメディアプラットフォーム「W」の立ち上げ構想が発表された。SNS上のフェイクニュース蔓延(まんえん)や欧州デジタルインフラの米中依存という安全保障リスクへの対応を背景に構想されたもので、データをフィンランドのサーバーに保存し米国クラウドを使用しない点、全ユーザーを人間として認証しbotを排除する点、アルゴリズムの選択権をユーザーに付与する点、収益の50%をコンテンツ作成者に還元する点などが主な特徴だ。ダボス会議でのプレ発表後、マーケティング費用ゼロで10億以上のインプレッションを獲得しており、2026年第2四半期にベータ版(招待制)の公開を予定している。

写真 ソーシャルメディアプラットフォーム「W」立ち上げイベントの様子(ジェトロ撮影)

ソーシャルメディアプラットフォーム「W」立ち上げイベントの様子(ジェトロ撮影)

また、イベント初日(2月10日)にはインターナショナル・デリゲーション・デーが開催され、各国代表団にスウェーデンおよび北欧地域のスタートアップ・投資家・地場産業が紹介された。ゲーム産業セッションでは、業界団体であるスウェーデンゲーム産業(Swedish Games Industry)のペル・ストロムベック氏がスウェーデンのゲーム産業の成功要因を講演。ゲーム配信プラットフォームであるSteamの売り上げの約20%を同国で開発あるいは何らかの関係があるゲームが占め、「ゲームの品質がすべて。財務工学は品質を補えない」とのメッセージが印象的だった。パラドックス・インタラクティブのスタジオ見学も実施され、知的財産(IP)の完全自社保有による長期収益モデルなど、日本のコンテンツ産業にとっても示唆に富む知見が得られた。

今回のTecharenaには、日系スタートアップや投資家も参加した。北欧で創業した日系メディカルデバイス系スタートアップNoui Lifeからは、EUの研究開発支援枠組み「ホライズン・ヨーロッパ」での資金調達が日系スタートアップにとって非常に困難であるという課題が共有された。なお2025年12月、同枠組みへの日本の準参加が実質合意され、日本の研究機関や企業は加盟国の機関と同等の条件での共同プロジェクトの遂行や資金調達が容易になることが期待される(2025年12月26日記事参照)。2026年度から、ジェトロでも日系起業家向けに欧州での公的資金獲得を容易にするプログラムなどの立ち上げを計画している。

(加賀悠介)

(スウェーデン、EU)

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