地政学リスクへの懸念が広がる中、米国重視が続伸、2025年度日本企業の海外事業展開調査

(世界、日本、米国、中国)

調査部国際経済課

2026年02月12日

ジェトロは2月12日、「第24回日本企業の海外事業展開に関するアンケート調査」の結果を発表した。調査は2025年11月4日~12月3日に、海外ビジネスに高い関心を有する日本企業(注1)を対象に実施し、3,369社から回答を得た(うち中小企業2,946社)。

チャンスとリスクの両面で際立つ米中の存在感

今後3年程度で最も重視する輸出先として、「米国」と回答した企業が最多(27.1%)となった。比較可能な2018年度以降で最高になり、現状の同国の通商政策を踏まえても、日本企業の米国重視の姿勢は強まっていることが浮き彫りになった。一方、「ASEAN」(19.4%)および「中国」(13.9%)との回答は、2024年から減少傾向が見られた。

海外進出方針においても、今後事業拡大を図る国・地域として、「米国」を選択する企業が4年連続で最多(40.7%)だった。新規に海外進出を目指す企業についても、飲食料品を中心に、米国での拠点設立に意欲を示す企業が、回答企業のうち400社存在することが明らかになった。

対米ビジネスへの意欲は堅調である一方、リスクに備えて米国ビジネスからの分散または移管を検討する企業は993社に上った。分散・移管先として検討する国・地域では、「EU」が最多(39.2%)で、次いで「ASEAN」(24.5%)、「日本」(24.1%)が続いた。

中国ビジネスは、拡張意欲にわずかな改善の兆候が見られた。中国で既存ビジネスの拡充や新規ビジネスを検討する企業の割合は34.1%と、わずかだが5年ぶりに増加に転じた。日本企業にとって米中両国は、市場規模や成長性の観点から魅力が健在であることが示された。

7割超が地政学リスク影響・懸念を認識、調達の中国依存は6割

地政学リスクの高まりを受け、回答企業の7割超(72.1%)が事業への影響、またはその懸念を認識している。そのうち、懸念されるリスク要因として、「米中関係・米中対立」を挙げる企業が最多(68.3%)となり、「米国の追加関税」(51.5%)についても半数以上の企業がリスクとして認識していた。地政学リスクは、事業活動の中でも、調達(輸入)、販売(輸出)、物流の順で、サプライチェーンに関わる部分に特に影響が大きいことも明らかとなった。

主要な調達先としては、主要原材料・部材を海外から調達する企業のうち、中国から調達している企業が最多(65.1%)となり、日本企業のサプライチェーン上で同国への依存度は高い。一方、地政学リスクや円安に伴うコスト増などを踏まえ、サプライチェーンを見直す(検討を含む)企業は全体の4分の1強に達した。新規調達先を検討する際には、「品質の高さ」(65.5%)、「価格の安さ」(64.9%)に加え、「地政学リスクの相対的低さ・安定性の高さ」(52.1%)、「地理的近接性」(48.6%)を重視する傾向が見られた。

外国人材雇用は過去最高を更新、9割近くが海外展開人材不足

外国人材を雇用する企業の割合は52.5%と、前年度から2.9ポイント増加し、2014年以降の調査で過去最高を更新した。常時雇用従業員に占める外国人材の割合についても、6%以上雇用している企業が3割超(32.3%)となり、前年度から5.4ポイント増と上昇傾向が見られた。

高度外国人材(注2)を採用する最多の理由は、「多言語対応できる外国人材の確保」(55.4%)だった。そのうち7割超の企業は、ビジネス上級レベル以上の日本語能力を希望している。一方、海外ビジネスを担う人材(日本人・外国人を含む)の確保状況について、85.2%の企業が「不足している・確保できていない」と回答した。人材不足の認識が強い一方で、外国人材にも高い日本語要件を求める傾向が浮き彫りとなった。

(注1)ジェトロ会員企業およびジェトロサービス利用実績のある日本企業。

(注2)高度外国人材は、「高度専門職」「技術・人文知識・国際業務」「経営・管理」「法律・会計業務」などの在留資格を有する外国人材とした。

(馬場安里紗)

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