トランプ米政権が温室効果ガス排出規制の根拠を撤回
(米国)
ニューヨーク発
2026年02月16日
米国環境保護庁(EPA)は2月13日、大気浄化法(Clean Air Act)に基づく温室効果ガス(GHG)排出規制の根拠となる、2009年の危険性認定(Endangerment Finding)を最終的に撤回すると発表
した。この撤回案は2025年7月に提案されていたが(2025年7月30日記事参照)、約57万2,000件ものパブリックコメントが寄せられコメント期間の延長を余儀なくされたほか、撤回の根拠として活用されていた地球温暖化に対するエネルギー省の見解
に対しても法的・科学的側面から激しい批判が寄せられ、調整が難航していた。
EPAが今回の撤回にあたって特に強調したのが、大気浄化法で許容されている規制範囲についての見解だ。すなわち、「大気浄化法は公衆衛生と福祉に直接的に害を及ぼす大気汚染対策を目的とするもの」であるのに対し、2009年の危険性認定はGHG(注1)に広範に適用するとともに、本認定が「自動車やエンジンの排出規定(注2)など経済と政策に広範な影響を及ぼすもの」となっていると指摘。このため、本認定は、法令の授権の範囲を逸脱しており、仮にGHG排出量の削減のために広範な規制を実施する場合には、別途法的根拠を用意する必要があるという理屈だ。気候変動についての科学的見解やGHG排出規制という手法の是非といった、批判が寄せられやすい論点を避け、法的権限の有無を強調している点がポイントだ。また、自動車のアフォーダビリティ(価格の手頃さ)の改善、アメリカン・ドリームの実現など、有権者の関心の高い経済的側面からのメリットを強調することで、政策の政治的な正当性も強調している。
今回の発表により、自動車、発電所、石油・ガス生産、産業などにおける大気浄化法を根拠としたGHG規制の大半は、事実上「空文化」することとなる。特に自動車のGHG排出量規制については、本発表の中で合わせて撤回が発表されている。その他の規制についても今回の発表を踏まえて、順次廃止されていくものと考えられる。しかし、今回の決定に対しては天然資源保護協議会(NRDC
)や米国公衆衛生協会(APHA
)など複数の団体が批判的なコメントを発している。また、カリフォルニア州は今回の措置に対して、既に提訴の方針を表明しており、今後、大気浄化法の法的解釈を巡って法廷で争われることになる見込みだ。
(注1)二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、および六フッ化硫黄(SF6)の6つを温室効果ガス(GHG)として定義していた。
(注2)大気浄化法202条aでは、「公衆衛生または福祉を危険にさらすと合理的に予測される大気汚染を引き起こす、または助長すると判断した、あらゆるクラスの新型自動車または新型自動車エンジンからの大気汚染物質の排出に適用される基準を定めなければならない」とされている。
(加藤翔一)
(米国)
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