トランプ政権が温室効果ガス排出規制の根拠の撤回を提案
(米国)
ニューヨーク発
2025年07月30日
米国環境保護庁(EPA)のリー・ゼルディン長官は7月29日、大気浄化法(Clean Air Act)に基づく温室効果ガス(GHG)排出規制の根拠となる、2009年の危険因子判定の撤回提案を発表
した。本判定の撤回については、2025年3月にゼルディン長官から見直しの対象である旨が発表されていた(2025年3月14日記事参照)。
今回廃止となる2009年危険因子判定は、2007年に最高裁判決でGHGが大気汚染物質であると判断されたことを踏まえ、二酸化炭素(CO2)、メタン(CH4)、亜酸化窒素(N2O)、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、パーフルオロカーボン(PFC)、および六フッ化硫黄(SF6)の6つをGHGとして定義し、これらを「現在および将来の公衆衛生と福祉を脅かすもの」として、大気浄化法に基づく規制の対象とすることを定めたものだった。今回、本判定の撤回が提案されたことで、自動車、工場、発電所などに対してGHG排出を規制する根拠が失われることとなる。
ゼルディン長官は今回の撤回について、「独立して危険性の評価を行っていないCO2が脅威なのではなく、EPAのGHG排出基準そのもの、その基準自体が米国民の生活にとって真の脅威であるという懸念をはっきりと耳にしてきた。最終決定されれば、危険因子判定とそれに伴う規制が撤回され、米国の企業と家庭に課せられた1兆ドル以上の隠れた税金がなくなるだろう」と述べ、コストカットの面から、今回の意義を強調した。
本提案に関しては、今後パブリックコメントが実施されるもようだが、このまま本判定が撤回されるのかどうかはわからない。本判定に関しては、過去にも複数回にわたり共和党から異議申し立てや訴訟がなされてきたものの、最高裁などによっていずれも却下されてきた経緯がある。本提案に対する環境団体などからの反発は必至で、訴訟となった場合に政権側が勝訴するかどうかは不透明だ。
(加藤翔一)
(米国)
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