鉄鋼大手アルセロール・ミタル、フランス最大級の電気炉投資を決定
(フランス、EU、台湾)
パリ発
2026年02月12日
鉄鋼大手アルセロール・ミタルは2月10日、フランス北部ダンケルク製鉄所において、総額13億ユーロを投じた電気炉(EAF)を建設することを正式に発表した(プレスリリース
、フランス語)。同社のフランスにおける近年最大規模の投資で、同拠点の脱炭素化戦略を進める大きな節目となる。新設炉は年間200万トンの粗鋼を生産でき、2029年の稼働を予定する。リサイクル鋼や直接還元鉄(DRI)を活用し、従来の高炉に比べ二酸化炭素(CO2)排出量を3分の1に抑える見通しだ。
脱炭素化投資を再開する背景には、欧州委員会が進める関税割当制度(TRQ)導入や炭素国境調整メカニズム(CBAM)改革など、欧州鉄鋼産業の競争条件を整える政策が進展したことがある(2025年10月14日記事参照)。同社は、TRQを迅速に導入し、CBAMの課題を早期に是正することが重要だと強調する。これらが計画どおり完全に実施されれば、欧州市場において公正な競争条件が回復し、EU域内での鉄鋼生産の未来が確保できると評価している。さらに、フランス電力(EDF)との長期原子力発電電力割当契約(CAPN)の締結により、低炭素で安定した電力を確保したことも、事業基盤強化につながったと説明した。
今回の投資額の半分は、省エネ促進を目的とした「エネルギー節約証書(CEE)」を通じて賄われる。同制度はエネルギー供給事業者に対し、省エネやCO2削減を支援する投資を義務付ける仕組みで、電気炉導入の大きな後押しとなる。
エマニュエル・マクロン大統領は同日、アルセロール・ミタルのダンケルク工場を訪問し、欧州の鉄鋼セーフガード措置やCBAMの導入に加え、フランスの競争力のある電力価格、18年間のCAPN、CEE支援などが整備されたことで、「企業がフランスと欧州の競争力を再評価し、投資再開を決断した」と強調した。また、今回の決定を「産業の未来を開く第一歩」と評価し、第2電気炉の検討や水素プロジェクトの推進、ダンケルクと並ぶ同社の重要拠点である南部フォス=シュル=メール工場の発展などへの期待を寄せ、フランスが一丸となって「フランスおよび欧州の鉄鋼業のために前進を続ける」と述べた。
ダンケルク地域は460社以上の製造企業が集積する一大工業地域で、マクロン大統領が2017年以降進めてきた脱炭素化と再工業化の象徴的な地域として位置づけられる。同地域では、バッテリー製造の台湾プロロジウムやフランスの同業ベルコールが大規模電池工場を建設するなど、脱炭素産業の集積も加速している。
(山崎あき)
(フランス、EU、台湾)
ビジネス短信 104d6b4ec9edad26




閉じる
