フランス政府、2026年予算法案で憲法第49.3条を適用、採決を行わずに法案成立へ

(フランス)

パリ発

2026年01月23日

フランス政府は1月20日、2026年予算法案(PLF)の歳入部分をめぐる下院での再審議において、憲法第49条第3項(通称49.3条)を適用し、採決を行わずに法案を成立させる手続きに踏み切った。セバスチャン・ルコルニュ首相は前日19日の閣議後、「ある種の後悔とわずかな苦さを伴う決断だ」と述べ、350時間を超える議会審議が行き詰まる中での判断だったと説明。首相はこれまで、49.3条を行使しない考えを示していた(2025年10月16日記事参照)。

政府の49.3条適用を受け、極左「不服従のフランス(LFI)」を中心とする下院議員111人が内閣不信任動議を提出。また同日、極右「国民連合(RN)」のマリーヌ・ルペン氏ら極右系議員104人による別の不信任動議も提出された。不信任動議が可決されれば、予算案は否決され内閣は総辞職となるが、否決された場合、予算法案は成立したものと見なされる。

予算法の最終案は、社会党の要求を踏まえ、当初案から大幅に修正された。財政赤字をGDP比5%以内に抑制することを中核目標としつつ、家計や企業への増税は行わない構成となっている。家計分野では、低所得勤労世帯の購買力対策として就労手当(プリム・ダクティビテ)を改革・増額し、月平均約50ユーロの給付増を実施。所得税は増税せず、インフレを反映した税率表の調整にとどめる。学生向けには奨学金を維持するとともに、2026年5月から1食1ユーロで学生食堂が利用可能となる制度を導入する。

社会的弱者に対しては、障害者給付や住宅手当(APL)を削減せず、年金生活者の所得控除も見直さない。一方で、脱税や過度な節税への取り締まりを強化する。住宅分野では、社会住宅事業者への支援を4億ユーロ増額し、住宅の省エネ改築補助制度「マ・プリム・レノブ」を維持する。企業向けには社会保険料減免を継続し、若者の見習い就労制度への支援も続ける。他方、大企業約300社を対象とする特別課税の適用は延長し、2026年も約80億ユーロの税収を見込む。

社会党のオリビエ・フォール第1書記は20日、最終案の透明性確保と「国民の犠牲の上に立たない歳出調整」という条件が満たされるとし、不信任を見送る考えを表明した。政府が購買力対策や学生支援を盛り込んだこと、同党が提案した大企業への課税を維持したことに、社会党は一定の評価を示している。

(山崎あき)

(フランス)

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