英国雇用権利法成立、労働者の権利保護を強化
(英国)
ロンドン発
2026年01月07日
英国政府は2025年12月18日、雇用権利法の成立を発表
した。雇用法の改正は労働党の総選挙での公約の1つだった(2024年6月14日記事参照)が、2024年10月の法案発表以降、上下両院での審議が続いていた議論が決着した(2024年10月18日記事、2025年7月8日記事参照)。
主な争点の1つだった、不公正解雇から保護される権利を勤務初日から付与する点については、採用活動への影響が大きいとして産業界から強い反対があり、勤務開始から6カ月経過後に付与する内容に修正され、2027年から導入される(注1)。
適用時期と主な内容は次のとおり。
〇2025年12月18日
- 保健や消防などのサービスにおいてストライキ中も最低サービス水準の確保を義務付けた、2023年労働争議法を廃止。
〇2026年2月
- 労働争議への参加を理由とする不利益な取り扱いや不公正解雇からの保護を規定。
- 労働組合の承認手続きの簡素化など、労働組合関連の政策パッケージを導入。
〇2026年4月
- 父親の育児休暇および両親の無給育児休暇を取得する権利を雇用初日から付与。
- 疾病手当の支給を強化(規定された額以上とする収入要件を撤廃、支給開始までの待機期間を廃止)。
- 適正な方法で集団的解雇が行われなかった場合の従業員への賃金補償期間の上限を現在の90日分から180日分に拡大。
- 内部告発者に対する保護を強化。
- 男女間賃金格差の解消と、更年期を迎える従業員支援を明記した行動計画の策定(現時点では任意、2027年中に大規模雇用主に対し義務化予定)。
- 労働組合に関する法的枠組みを現代の労働慣行に即した内容に刷新。
- 公正労働庁(Fair Work Agency)を設立。
〇2026年10月
- 労働条件の引き下げなどを目的とした解雇後の再雇用(fire and rehire)を廃止。
- 雇用主の合理的なセクハラ防止策の策定義務について、従来の「合理的な措置」から、「あらゆる合理的な措置」を求めるよう見直し。
- 第三者による自社従業員へのハラスメント防止を雇用主に義務付け。
〇2027年
- 不公正解雇から保護される権利を勤務開始から6カ月経過後に付与。
- 妊婦、産休中および復職後6カ月以内の母親に対する解雇保護を強化。
- 従業員の忌引休暇の取得を保障。
- 搾取的なゼロ時間契約(注2)を廃止。
- フレキシブルな勤務形態の請求について、合意に至らない場合の明確な手続きを雇用主に義務付け(注3)。
英国商工会議所は2025年12月18日、雇用権利法について「企業は実行可能性とコストについて大きな懸念を抱いている。日常的な実務の大半を規定する2次立法に関する協議が今後極めて重要となる」とのコメントを発表した。
(注1)現行制度では、同権利は勤務開始から2年経過後に付与される。
(注2)雇用主が最低労働時間を保証しない雇用契約を指す。
(注3)請求拒否の理由説明および拒否判断の合理性が求められる。
(野崎麻由美)
(英国)
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