米国によるマドゥーロ大統領拘束、チリ国内で賛否分かれる
(チリ、ベネズエラ、米国)
サンティアゴ発
2026年01月07日
1月3日に米国がベネズエラでニコラス・マドゥーロ大統領を拘束し、米国へ移送したことは、チリ国内にさまざまな反響を呼んだ。ガブリエル・ボリッチ大統領は3日、SNSで米国の軍事行動を非難し、「ベネズエラの危機は暴力や外国の干渉によってではなく、対話と多国間主義の支えにより解決されるべきだ」と表明した。またチリ外務省は4日、ブラジルやメキシコ、スペインなどのイベロアメリカ左派諸国とともに、米国の軍事行動に対する深い懸念と強い拒否を示し、平和的解決を求める声明を発表
した。声明では、中南米地域の平和維持と連帯を呼びかけ、他国政府による資源の支配への懸念も併せて表明した。
カミラ・バジェホ内閣官房長官は5日、チリ政府の基本姿勢は外交の伝統、すなわち国際法を尊重するもので、いかなる国も他国を攻撃してはならないという立場であり、米国の攻撃は国際法の侵害だと述べた。また、「ベネズエラは既に民主主義を失っており、今や石油まで失う可能性がある。これは中南米地域にとって危険な前例となり、明日はパナマ運河や、当地域の銅やリチウムといった戦略資源でも同じことが起きるかもしれない」と警戒感を示した。
一方、前月の選挙で勝利した次期大統領ホセ・アントニオ・カスト氏(2025年12月16日記事参照)は3日、SNSで「南米地域にとって素晴らしいニュース」と評価し、民主主義回復と移民の帰還、麻薬取引や犯罪組織との戦いを進めるべきだと強調した。チリ右派各党指導者もドナルド・トランプ大統領の決断を称賛する一方、左派各党は米国の介入を強く批判し、左右各派の分断が鮮明となった。なお、5日のインタビューでカスト氏は「外交政策について在任中の大統領が政府の方針を示すことに異議を唱えるつもりはない。大統領には立場を示す正当な権利があり、また自身にも次期大統領として明確な立場を持つ正当な権利がある」と主張した。
マドゥーロ大統領逮捕直後の3日早朝から、チリ在住のベネズエラ人の多数がサンティアゴ中心部に自発的に集まり、チャベス主義体制からの解放を祝った。チリにおけるベネズエラ系移民は合法・非合法を含め80万人超と推定され(2025年)、チリ総人口の約3~4%を占める。移民問題と治安悪化はチリ社会の主要課題であり、カスト新政権が進める不法移民送還政策に今回の事態がどう影響するかが注視される。
(橋爪優太)
(チリ、ベネズエラ、米国)
ビジネス短信 458030b622150e7f




閉じる
