欧州委のCBAM改定案、産業界はおおむね評価も、鉄鋼やアルミ業界からは不十分との声

(EU)

ブリュッセル発

2026年01月16日

ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)は2025年12月17日、欧州委員会が同日発表した炭素国境調整メカニズム(CBAM)の改定案(2025年12月19日記事参照)について、欧州委がCBAMの実効性を高め、公正な競争の担保に向けた明確な方針を示したと評価した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同連盟が早急に対処すべきとしていた(1)EUからの輸出、(2)第三国による迂回防止、(3)川下製品への対象拡大、を前向きな点として挙げた。具体的には、(1)に関し、欧州委案の具体化に向け、議論に参画する意思を示し、WTOルールに整合する解決策を遅滞なく採択・実施すべきとした。(2)については、さらに具体的かつ執行可能な措置が必要であり、(3)は一部の製品に対し慎重に適用することが求められるとし、適切な執行を通じた制度の信頼性と実効性が重要と述べた。

一方、欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は同日、改正案は現行制度の抜け穴をふさぐ点はあるとしつつも、鉄鋼業界が競争力や雇用を維持しつつ、脱炭素化を進めるには、不十分との認識を示した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。特に、EUからの輸出に係る提案は、2年間の期限付きで、対象製品を限定するなど抜本的な施策といえず、「脱炭素基金」構想も財源が明確でないと指摘し、より長期的かつ包括的な施策が必要と述べた。迂回防止措置案に関しても、今後の関連法令で詳細を詰めるのでは有効性が低いと評価した。川下製品への拡大の対象を絞った点に懸念を示し、新たな抜け穴を生み出す可能性があると指摘。アルミニウム業界が要望した製造工程で発生するスクラップをCBAM計算に組み込むことは、鉄鋼業界にとっては逆効果を生むと否定的な見解を示した。

ヨーロピアン・アルミニウムは2025年12月19日、自動車部品、ワイヤーやケーブルなど川下製品への適用拡大を歓迎したが、多くのアルミ関連製品が拡大案に含まれていないと不満を示した(プレスリリースPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。また、アルミと鉄鋼のバリューチェーン、貿易の現状や国際競争力の違いを認識し、それぞれ個別のアプローチを採る必要を強調した。特に、アルミ業界にとってスクラップの扱いは非常に重要であり、今回提案された製造工程で発生するものだけでなく、製品として使用された後に回収されるスクラップも対象に含めるべきだと主張した。脱炭素基金構想の支援策については、鉄鋼と異なり、アルミ輸出事業者の大半はEUの排出量取引制度(EU ETS)の対象外の川下の製造事業者であることを踏まえ、あらゆるアルミ製品の製造事業者を支援対象に含めるべきと述べた。さらに、今回の輸出に係る提案は一時的な解決策に過ぎないとして、とりわけ支援規模が不明瞭であることから、アルミ製品の輸出に特化した措置が必要との認識を示した。

(滝澤祥子)

(EU)

ビジネス短信 3dc76506674030ae