レーザー式ウラン濃縮技術開発のLIST、米テネシー州への13億ドル超の投資を発表
(米国)
アトランタ発
2026年01月22日
米国テネシー州のビル・リー知事(共和党)は1月16日、レーザーによる同位体分離技術を活用してウラン濃縮を行うレーザー・アイソトープ・セパレーション・テクノロジーズ(LIST、本社:ニューヨーク州)が13億8,000万ドルを投じて、同州オークリッジ市に商業規模のレーザー式ウラン濃縮施設を建設すると発表
した。新たに203人を雇用する予定だ。
ウランの濃縮方法には遠心分離法、ガス拡散法、レーザー法などがあり、遠心分離法とガス拡散法が世界的に利用されている。一方で、レーザー法はまだ実用化されていないが、遠心分離法と比べて、より効率的で費用対効果の高い方法となる可能性がある。この分野で開発が進んでいるのが、オーストラリアのサイレックス・システムズの技術だ。米国でもサイレックスと世界最大のウラン生産事業者の1つであるカメコの合弁会社のグローバル・レーザー・エンリッチメント(GLE)が同技術の開発を進めており、GLEは2025年10月、米国エネルギー省(DOE)が設定する技術成熟度レベル(TRL、注1)でTRL-6を達成したと発表
した。
LISTは2023年、同社技術を精緻化し実証するため、オークリッジ市にオフィスとレーザー濃縮研究開発本部を設置した。LISTは2025年3月、同社の開発する技術がTRL-4を達成したと発表
しており、今回の施設でTRL-5以降の開発を進める見込みだ。LISTの技術は、サイレックスの技術よりは実用化まで時間がかかりそうだが、米国発の技術として経済安全保障の観点からも注目されており、DOEの低濃縮ウラン(LEU)濃縮調達プログラムにより、LEU調達契約を締結可能な企業に選定されている(注2)。
テネシー州は、原子力基金(注3)を活用した原子力関連企業の誘致や教育・訓練プログラムの提供などにより、州の原子力開発・製造エコシステムの拡大を目指しており、同基金を活用して同州に進出した企業はLISTで7社目(注4)となる(2025年10月20日記事参照)。今回選定されたオークリッジ市には、原子力関連産業が集積しているほか、DOE管轄のオークリッジ国立研究所があり、原子力関連の研究も盛んだ(注5)。
(注1)プロジェクトに関連する技術の成熟度レベルを特定するとともに、プロジェクト実施過程における計画的な進展を示す指標。研究段階のTRL-1から実用化段階のTRL-9までの9段階で評価される。TRL-4までは実験室レベルの研究段階で、TRL-6はプロタイプの実証段階。TRL-4以降は実証試験が成功するか、TRL-6以降は規模拡大可能性などが問われる。
(注2)契約締結可能な企業として、アメリカン・セントリフュージ・オペレーティング、ジェネラル・マター、GLE、ルイジアナ・エネルギー・サービシーズ、LIST、オラノ・フェデラルサービシーズの6社が選定されている。DOEは1月5日、オラノなど3社と計27億ドルの個別契約を締結したと発表
した。ただし、契約締結可能な企業として選定された6社は、予算措置が取られ次第、今後の個別契約への入札資格を有するとのことだ。
(注3)5,000万ドルが2023~2024会計年度予算で州議会から承認され、2024~2025会計年度予算では2,000万ドルが追加配分されている。
(注4)これまで同基金を活用し同州への投資を発表したのは、ステラレータ型核融合技術を開発するタイプ・ワン・エナジー、フランスの原子力燃料大手オラノ、遠心分離機などを製造するBWXテクノロジーズ、原子力産業向け高精度加工やエンジニアリングサービスなどを提供するマスター・マシーン、先進炉と燃料リサイクルの開発を進めているオクロ、可搬型小型原子炉(マイクロ炉)を開発するラディアント・インダストリーズの6社。
(注5)オークリッジ市には、1942年に開始された国家軍事プロジェクト「マンハッタン計画」の3つのオリジナルサイトの1つとして、ウラン濃縮施設が立地していた。
(檀野浩規)
(米国)
ビジネス短信 30eb0611d87063e9




閉じる
