OECDのタイ経済調査、将来投資への税収確保や規制緩和を提言
(タイ)
バンコク発
2025年12月19日
OECDは12月3日、「OECD経済調査(タイ編)」(2025年版)を公表
した。同調査によれば、タイ経済は減速傾向にあり、特に、製造業や観光業が困難に直面している。解決策として、歳入(税収)の確保や、生産性の向上、インフォーマル経済の是正などを挙げた。
同調査によると、OECDはタイの実質GDP成長率について、2025年は2.0%、2026年は1.5%と予測している。財政面では、公的債務残高がGDP比65%を超え、財政規則で定める上限の70%に近づいていると指摘した。一方、タイには歳入拡大の余地が大きいとの見方も示した。具体的には、付加価値税(VAT)の税率引き上げや適用範囲の拡大、また個人所得税の課税基準額の引き下げを提案した。また、OECDは、タイの労働者の約9割が個人所得税を納税していないとしている。こうしたことから、VAT引き上げについては、タイ関税局が部分的に取り組む方針を表明している(2025年11月11日記事参照)。
さらに、OECDはタイの労働生産性について、直近2015~2023年で2.1%増と、過去(2010~2015年)の4.8%増に比べ、鈍化していると報告。これを踏まえ、市場競争と規制緩和が必要と強調した。例えば、参入障壁など、規制の強度を測定するOECDの指標(製品市場規制指標:PMR)によると、タイのスコアは2.4で、OECD平均の1.3を大きく上回っている。公平な競争の促進に向けて、OECDは、サービス分野における外資規制の緩和や、主要輸出先との自由貿易協定(FTA)交渉の加速、国有企業に対する競争法の適用除外の廃止が重要としている。
その他、同調査では、労働人口の52.7%に相当する約2,110万人(2024年)が、インフォーマル経済部門で雇用されており、これが、国家の産業全体の生産性改善への投資や、税収の阻害要因になっているとも指摘する。そのため、技能訓練や低所得者層の社会保障拠出金の削減、非拠出型(税財源)社会保障給付の拡充を通じて、フォーマル経済への参加を促すべきと提言している。また、小規模企業向けに、売上高に基づく簡易的な推定課税制度(presumptive tax regime)を導入することも有効だとしている。
(藪恭兵)
(タイ)
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