在欧日系企業で労働コストの高さが最大の課題、中・東欧では人材獲得競争が激化
(欧州、EU、日本)
調査部欧州課
2025年12月23日
ジェトロが12月17日に発表した「2025年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)」(2025年12月17日記事参照)によると、在欧日系企業の経営上の問題点では、「労働コストの高さ」が56.7%(前年比5.6ポイント増)で最大の課題となり、「景気低迷、市場縮小」が52.3%(10.1ポイント増)で続いた。
前年最大の課題だった「人材の確保」は47.8%となり、前年比で17.7ポイント減少した。前年2番目だった「インフレ」は46.1%(8.9ポイント減)、5番目だった「輸送コスト」は38.7%(10.9ポイント減)となり、落ち着きがみられた。ただし製造業では、「調達コスト」が57.0%(5.1ポイント増)で最大の課題となった。
地域別にみると、西欧での経営課題は1位が「労働コストの高さ」(58.5%、前年比4.5ポイント増)で、「景気低迷、市場縮小」(52.8%、10.0ポイント増)が続き、西欧経済の低迷を反映する結果となった。中・東欧では1位が「ウクライナ情勢」(60.5%、4.1ポイント増)で、長引くロシアによるウクライナ侵攻が重荷となっている。2位に「労働コスト上昇率の高さ」(58.1%、8.8ポイント減)が続き、ポーランドでは7割を超えた。
2025年の基本給のベースアップ率(名目)は、セルビア(中央値4.50%)、ハンガリー(同5.00%)、ポーランド(同4.00%)、ルーマニア(4.25%)など中・東欧で高い。2026年は、2025年と比較すると低い水準を見込む企業が多い。
また、人材確保を巡る状況についての設問では、直近2年間で「悪化」したと回答した割合は30.4%だった。スタッフ・ワーカーの確保の悪化理由は、「賃金・待遇面など要求水準の高まり」が79.1%と最大だった。中・東欧では、次いで「他社との人材獲得競争の激化」(64.9%)の回答割合が高く、競争相手は地場企業が1位(56.6%)で、中国系企業(14.8%)が続いた。西欧では、悪化理由として「求める人材と求職者のスキルとのミスマッチ」(37.1%)、「労働市場における需要と供給のギャップの拡大」(29.3%)が続き、企業が求める能力に見合う人材が不足している。対策として、中・東欧では「福利厚生、働きやすい労働環境の整備」(66.4%)、西欧では「働き方の改革・柔軟化」(54.5%)に取り組む日系企業が多い。
(川嶋康子)
(欧州、EU、日本)
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