高コストや地政学リスクが課題、サステナビリティ規制緩和には期待、ジェトロ「海外進出日系企業実態調査(欧州編)」

(欧州、EU、ウクライナ、日本)

調査部欧州課

2025年12月17日

ジェトロは12月17日、「2025年度 海外進出日系企業実態調査(欧州編)」を発表した(プレスリリース)。調査は8月20日~9月19日に実施し、西欧14カ国、中・東欧11カ国の日系企業1,449社が対象。うち778社から有効回答を得た(有効回答率53.7%)。主なポイントは次のとおり。

(1)在中・東欧日系企業の動向:2025年の営業利益「黒字」見込みの割合は欧州全体では前年から0.7ポイント減の65.5%だった一方、中・東欧では全業種で前年比5.5ポイント増加し63.8%。特に製造業では64.5%と12.1ポイント増加した。2025年の営業利益見込みが前年と比べて「改善」する割合は、中・東欧の製造業では10.6ポイント増加し44.7%と好調だった。2025年の基本給のベースアップ率(名目、平均値)は人材獲得競争が激化する中・東欧で中央値が4%以上と特に高かった。

(2)米国関税措置の影響:米国と取引する製造業の43.2%が「マイナスの影響が大きい」と回答し、その理由としては「米国市場での需要減少」や「米国市場でのコスト競争力の低下」がいずれも約45%を占め、2大要因となった。関税措置の営業利益への影響が最も大きい品目は、「自動車・自動車部品」が最多で、輸送用機器部品(自動車など)のほかさまざまな業種の企業が同品目を選択した。

(3)サステナビリティ規制:すでに影響を受けている、または今後影響を受ける可能性が高いEUの政策・規制は、企業持続可能性報告指令(CSRD、43.6%)、包装・包装廃棄物規則(PPWR、42.7%)、炭素国境調整メカニズム(CBAM、33.6%)の順に回答が多かった。EUによるサステナビリティ規制の規制緩和の動きについては、「コスト・負担の軽減を期待」する声が、全体で67.1%と最大となった。

(4)デジタル関連政策・AIの活用:注目する欧州のデジタル化関連の政策や規制では、AI規制が前年調査から19.6ポイント上昇して46.5%となった。AIを「すでに活用している」と回答した企業は前年からほぼ倍増し、52.5%となった。AIの活用領域について、「データ分析・解析による予測、最適化」と回答した企業が64.7%で最大で、「ロボティクス・自動化システム」「画像認識などによる自動検出・探知」「AIを用いた設計や開発、自動生成」がそれぞれ約20%前後で続いた。

(5)人権尊重・脱炭素の取り組み:「人権デューディリジェンス(DD)を実施している」との回答割合は全体の41.7%と、前年から4.5ポイント増加した。一方「実施に向け準備中」と「実施検討のため情報収集中」の合計は前年から7.7ポイント減少し32.0%となった。脱炭素化に取り組んでいる企業の割合は61.8%と、2023年の60%台まで回復した。他方、予定がある企業は2.9ポイント減少し21.5%となった。

(齊藤圭、森友梨、近藤慶太郎)

(欧州、EU、ウクライナ、日本)

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