完全オンライン型スーパーマーケット運営会社、メキシコでサービス終了

(メキシコ)

メキシコ発

2025年12月23日

実店舗を持たない完全オンライン型スーパーマーケットを運営するメキシコのスタートアップ企業のフスト(Justo)は、12月15日をもってメキシコでサービスを終了すると自社ウェブサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで発表した。

フストは2019年に設立され、実店舗や卸業者を介さず、独自のオンラインサイトを通じて、生鮮食品を含む幅広い商品を指定箇所まで配達するサービスを提供してきた。コロナ禍での需要拡大を追い風に、メキシコ主要都市を中心に事業を急拡大し(2020年4月6日記事参照)、2021年にはブラジルやペルー市場にも参入した。一方で、成長路線の陰で事業の持続性が課題となっており、2024年にはペルーおよびブラジルでの事業を停止し、中南米地域全体で戦略の見直しを迫られていた。同年にはアマゾン・メキシコと提携し、アマゾンのプラットフォーム内に専用ショップを開設することで顧客層の拡大を試みたものの、業績回復には至らず、最終的に事業終了を決断したとみられる。

サービス終了の理由として、同社は「財務面、運営面、戦略面における複合的要因」と説明している。現地の報道では、倉庫管理や配達などを自前で行うビジネスモデルだったため、物流コストが重くのしかかり、収益性を確保することが難しくなったとの指摘もある。

新規参入企業に求められる持続可能なビジネスモデル

2023年には、同様に実店舗を持たない完全オンライン型のスーパーマーケットを手掛け、注文から15分以内に配達する超短時間配送を軸に成長していたジョーカー(Jokr、本社:ルクセンブルク)もメキシコから撤退した。同社の撤退要因について、ベンチャーキャピタルのメレックキャピタル(Melek Capital)のフラン・ガルシア氏は「1顧客あたりのコストと収益(ユニットエコノミクス)のバランスを良好に保つことができなかった」と指摘した(「エル・エコノミスタ」紙2023年2月17日付)。これらの事例は、メキシコのオンライン型マーケットが成長余地を持つ一方で、実店舗ネットワークを持たない事業者にとっては、物流コストを吸収できるだけの収益構造を構築することが難しいことを示している。メキシコの大手スーパーマーケットチェーンである米国系ウォルマート(Walmart)やソリアナ(Soriana)、チェドラウイ(Chedraui)などがオムニチャネル戦略(注)によりEC(電子商取引)事業を拡張する中、新規参入企業にとってはこうした既存プレーヤーに対抗可能なビジネスモデルを構築できるかどうかも課題となるだろう。

(注)店舗やECなど、複数の販売チャンネルを個別に扱うのではなく、有機的に結びつけて連携させる戦略。シームレスな顧客体験を通じて、多様化する消費者行動に対応することを目的とする。

(山中真菜)

(メキシコ)

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