フォルクスワーゲンが中国拠点を拡張、ドイツ国外初の現地完結型開発体制

(ドイツ、中国)

ベルリン発

2025年12月09日

ドイツ自動車大手フォルクスワーゲン(VW)グループは11月25日、同社100%子会社のフォルクスワーゲン・チャイナ・テクノロジー・カンパニー(VCTC)の中国安徽省合肥市における研究開発拠点の最終拡張を完了したと発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。同拠点は、ドイツ国外では最も包括的な研究開発拠点となり、同社史上初めて新車プラットフォームと基幹技術をドイツ国外で完全に開発し、市場投入までの承認プロセスを現地で完結できる体制を構築した。オリバー・ブルーメ最高経営責任者(CEO)は、世界最大の自動車市場における地位を強化し、世界の自動車技術の牽引役となる明確な目標を推進すると述べた。

新拠点は、約10万平方メートルの敷地に、ソフトウエア・ハードウエア試験、バッテリーやパワートレインの検証、フルプラットフォーム検証を統合した100以上の先進研究所を整備。これにより、開発期間を30%短縮でき、新型車・新技術のコンセプト段階での現地開発と早期のサプライヤー統合を図ることで、新型モデルのコストを最大50%削減可能となる。

中国市場では近年、中国系メーカーが存在感を強める中、ドイツ系メーカーはシェアを落とし、難しい状況にあり(2025年6月27日付地域・分析レポート参照)、2024年はVWも中国での販売台数が前年を下回った。こうした状況も踏まえ、同社は「中国で、中国向け(In China, for China)」という一貫した戦略のもと、現地化を推進し、製品を中国市場のニーズに合わせる取り組みを強化している。

ドイツ経済誌「ビルトシャフツ・ボッヒェ」(12月1日)は、この背景には、本社で定義された「世界共通車」がどこでも機能する時代は終わりを迎えつつあり、中国・北米・欧州ではそれぞれ異なるトレンドやニーズがある中、世界の自動車業界で進む「現地で、現地向け(Local for local)」へのシフトを象徴する動きと説明。新型コロナ禍やウクライナ紛争、半導体不足などで露呈したサプライチェーンの脆弱(ぜいじゃく)性に加え、貿易紛争や関税措置により「母国」からの輸出はますます魅力のないものになっていると指摘。その一方で、日系や韓国系のメーカーによって、欧州向け自動車が欧州で開発・製造される動きもあるため、産業の空洞化を引き起こすわけではないとした。

(中山裕貴)

(ドイツ、中国)

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