米運輸省、2022~2031年モデルの企業間平均燃費基準の改定案を発表、最終年は1ガロン34.5マイル

(米国)

ニューヨーク発

2025年12月08日

米国運輸省道路交通安全局(NHTSA)は12月3日、「Freedom Means Affordable Cars(直訳:自由とは手頃な価格の車を意味する)」構想の一環として、2022~2031年モデルイヤー(MY)のライトデューティービークル(LDV、注1)を対象とした、企業平均燃費基準(CAFE基準)の規則案(NPRM)PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(注2)。バイデン前政権下で策定された最終規則を大幅に改定する内容となっている。NHTSAは今回の改定について、「電動化を前提とした燃費基準を見直し、実際の燃費性能に即した制度とすることで、自動車価格の上昇といった隠れた負担から米国人を解放し、さらに米国の製造業の競争力を回復させ、より安全で手頃な価格の自動車生産を可能にする」と位置付けた。

今回の改定案には次の点が盛り込まれた(注3)。(1)2022MYを起点とした年ごとの燃費改善率を、2022~2026MYで0.5%、2027~2031MYを0.25%と設定。これに基づく2031MY時点の平均燃費値は、1ガロン(約3.8リットル)当たり34.5マイル(1マイル=約1.6キロメートル)(mi/g)と推定。これはバイデン政権下の最終規則での50.4マイル(mi/g)を大幅に下回る(2024年6月17日記事参照)。(2)NHTSAは基準値設定にあたり、バッテリー式電気自動車(BEV)や燃料電池車(FCV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)の電気走行分を除外し、ガソリンおよびディーゼルなどを燃料とする車両を基準とした。(3)現行規制において「小型トラック」に分類されていたクロスオーバーSUVや小型SUVを「乗用自動車」とし、実際の車両利用に即した分類とした。(4)2028MY以降の基準値超過分クレジットの企業間取引を廃止した。

NHTSAは、改定が実現した場合、車両の初期費用が1台あたり900ドル削減され、今後5年間で1,090億ドルの節約をもたらすと試算した。また、価格の低下が、より新しく安全な自動車への買い替えを後押しすることから、2050年までに全米で1,500人以上の命が救われ、約25万人の重傷事故が予防できるとみている。

規則案に関し、ゼネラルモーターズ(GM)やトヨタなど主要メーカーをメンバーとする自動車イノベーション協会(AAI)のジョン・ボゼーラ代表兼最高経営責任者(CEO)外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますは、「NHTSAの発表内容を確認中だが、同局が新たな燃費基準を提案したことをうれしく思う。われわれはこれまで一貫して、前政権下で最終決定された現行のCAFE基準は現在のEV市場を考えると、自動車メーカーにとって達成が非常に困難であると明確に述べてきた」とし、新たに発表された合理的で達成可能な基準が消費者の選択肢を守り、米国自動車業界の国際競争力を維持することになる、と強調した。また、全米ディーラー協会(NADA)のトム・カストリオタ会長は、今回の規則案の発表にともない大統領執務室で行われたイベントで、トランプ大統領に対し、「大統領としてあなたが行った行動は、間違いなく顧客の費用を節約することになるだろう。消費者が欲しいものを買えるようにするという約束を果たしてくれた」と称賛した。同イベントには、フォードのジム・ファーリーCEOやステランティスのアントニオ・フィローサCEO、GM幹部らも出席している(CNBC12月3日)。一方、環境規制強化を進めるカリフォルニア州のギャビン・ニューサム知事は、「米国人はガソリンスタンドで何十億ドルも余計に使うことを余儀なくされ、同時に地域社会の空気も汚染されることになる」といった批判の声を上げた(CBC、12月4日)。

トランプ政権はすでに、2025年6月にカリフォルニア州のゼロエミッション車販売義務化を無効化している(2025年6月17日記事参照)。また、連邦政府の温室効果ガス(GHG)排出基準値に関しても、近いうちに緩和に向けた見直しが行われる可能性が高い。

今回の規則案に関し、NHTSAは連邦政府のポータルサイト外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますなどで官報掲載後45日間パブリックコメントを受け付ける。

(注1)乗用自動車と小型トラック〔バン、スポーツ用多目的車(SUV)、ピックアップトラック〕の総称。

(注2)CAFEとはCorporate Average Fuel Economyの略。運輸省の道路交通安全局(NHTSA)が管理している。乗用車と小型トラック(SUV、バン、ピックアップトラック)の国内販売用の新車生産台数で加重平均した燃費基準を年式ごとに設定し、自動車メーカーに対して準拠を義務付けている。

(注3)12月4日時点での暫定的な解釈に基づく。

(大原典子)

(米国)

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