駐在員の労働許可を巡り法令上明確な定めのない制限をベトナム政府が提示、日系企業に影響の恐れ
(ベトナム)
ハノイ発
2025年12月05日
ベトナム内務省が、企業内異動の形式で労働許可を得てベトナムで勤務する外国人労働者(日本本社からベトナム子会社へ転勤するなどのかたちで勤務する駐在員)に対し、現地法人による給与の支払いを認めないとの解釈を示している。本解釈は法令上、明確に定められていないが、この制限が適用された場合、日系企業の給与支払いの実態と異なることから、企業の実務や駐在員の勤務形態に影響が出る恐れがある。
本件は、ベトナム政府が2025年8月7日付で公布・施行した国内で勤務する外国人労働者に関する政令219号(219/2025/ND-CP、注1)の運用説明会などを通じて明らかになったもの。ハノイ市やホーチミン市で担当当局が次の説明をしている。
- 企業内異動の形式で労働許可を取得し、就業する外国人は、ベトナム国内で労働契約を交わさないため、ベトナム現地法人から給与を支給されない(本社が負担すべき)。
- ベトナム現地法人が外国人労働者の給与を支払う場合、企業内異動でない形式で労働許可を取得し直し、労働契約を交わし、国内の社会保険(強制保険)に加入する必要がある。
これに対し、ベトナム日本商工会議所(JCCI)は、(1)日系企業による企業内異動の駐在員への給与支払いの実態や国際慣習に合わないこと、(2)ベトナム国内の法令の規定に基づかない解釈であること、(3)WTOコミットメントにも反するものであることを指摘し、運用の是正を求める意見書を内務省に送付した。
しかし、12月1日時点では、内務省は上記の解釈を繰り返し説明するにとどまっている。
今後、日本企業の運用実態と内務省見解の間の隔たりが解消されない場合、勤務形態(労働許可のとり直し)や社会保険料の二重払いなどの懸念がある(注2)。
また、現地で給与を負担している企業内異動の駐在員について、社会保険料を数年単位で遡及(そきゅう)して支払うよう求められた日系企業の事例も報告されている。
(注1)政令219号や労働許可の大枠については「外国人就業規制・在留許可、現地人の雇用」のページを参照。
(注2)日本とベトナム間の社会保障協定は未締結。両国は2025年7月から交渉を開始
し、協議中だ。
(萩原遼太朗)
(ベトナム)
ビジネス短信 d79e573362e787e4




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